コロナ禍の2020年、マスク着用をめぐりLCC機内でトラブルを起こし、客室乗務員に暴行を加え、乗務員や機長の業務を妨害したなどとして、1審で有罪判決を受けた被告。判決を不服として控訴していましたが、大阪高裁は10月30日、控訴を棄却しました。

 1審判決によりますと、元大学職員の奥野淳也被告(37)は、コロナ禍の2020年9月、LCC「ピーチ・アビエーション」が運航する釧路空港発・関西空港行きの旅客機を利用した際に、客室乗務員からマスク着用を求められましたが拒否。

さらに、マスクを着けないことをめぐり他の乗客と口論になり、客室乗務員に対し「その乗客に謝罪させよ」と要求しました。

機長と客室乗務員は要求を断ったものの、奥野被告は大声で発言を続けるなどしたため、そうした行為をやめさせようと、機長は命令書の交付を指示。そして客室乗務員が命令書を交付する際、奥野被告は乗務員の腕を手でひねりました。

一連の事態を受け、機長は目的地をいったん変更することを決め、飛行機は新潟空港に緊急着陸。空港係員の説得を受け、奥野被告は降機しました。

 ▼1審は威力業務妨害・暴行・航空法違反の各罪の成立を認定

 威力業務妨害などの罪で起訴された奥野被告は、1審の裁判で「私はピーチ・アビエーションの誤った判断により飛行機を降ろされた。客室乗務員を威圧したり暴行したりはしていない」と無罪を主張。

 しかし去年12月に大阪地裁は、「証人尋問で機長の証言が得られなかったため、緊急着陸の高度の必要性があったかは不明」としつつ、威力業務妨害・暴行・航空法違反の各罪が成立すると判断。

 同じくマスク着用をめぐり、2021年に千葉県内の飲食店で起こした事件(この事件でも威力業務妨害罪・公務執行妨害罪の成立を認定)と合わせて、奥野被告に懲役2年・執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました。

 ▼控訴審でも無罪主張 「マスク拒否おじさん」「マスパセ」名乗り主張をSNS等で発信

 奥野被告は「まるで中世の魔女狩り裁判で、粗悪な判決だ」などとして控訴。今年8月の公判でも、「現場の乗務員が『マスクをしない客を降ろしたいという意思をもって、そして降ろした』というのが真相だ」「暴行も明白な冤罪」などとして、改めて無罪を主張していました。

 また、奥野被告は「マスク拒否おじさん」「マスパセ」と名乗り、書籍やSNSを通じて自身の主張の発信を続けていました。

 ▼判決は控訴棄却…言い渡し後「おかしい!法壇から下りなさい!」と裁判長に詰め寄る

 大阪高裁は10月30日、「航空機では、いったん安全運転を妨げられると大惨事につながり、安全確保の必要性は他の輸送機関より高い」として、機長や客室乗務員の対応を是認。「客室乗務員の説明には一貫性がある」「判決内容に影響を与える事実誤認はない」などとして、奥野被告の控訴を棄却しました。

 判決言い渡しの間、奥野被告は何度も首をかしげながら、裁判官の言葉を聞いていました。

 さらに、言い渡しが終わると、奥野被告は証言台の前の席から立ち上がり、「おかしい!法壇から下りなさい!」と裁判長に詰め寄りました。