北アルプス・立山連峰のふもとにある、富山県立山町の水田に囲まれたのどかな住宅地。そこに長く住む男性は、自宅横の柿を見上げていました。40年前に自宅を新築した際に植えた柿の木。実が熟すと赤みが濃くなり近所の人に配ると「おいしい」と評判だったといいます。しかし、その木の伐採を決めました。「家族のようなものだった」と語る男性、苦渋の決断の背景には、クマの異常出没がありました。


柳原秀雄さん:
「こんなにデカいの登れないもん怖くて、昔、若いときに植えたけど、こんなに大きくなるなんて…」
富山県立山町に住む柳原秀雄さん、83歳。柳原さんを悩ませているのが、自宅のそばに植えられた「柿の木」です。富山県ではドングリが不作で、山にいるはずのクマがこの柿の実を求めて、人里に下りてきているのです。
柳原秀雄さん:「もしこのあたりでクマでも出たら近所の人に苦情を言われる、でも、どうやって切ったらいいのか分からなかったから…」

81歳の妻と2人暮らしの柳原さん。自宅にチェーンソーなどあるはずもなく、高齢の体では何もできずにいました。そうしたなか、立山町役場では今月から伐採作業を代行する支援事業を始めました。支援の対象は、町内に住む満70歳以上のみの世帯で、伐採作業を住民に代わって無料で行います。
立山町役場農村環境係・大﨑喜孝係長:「柿の木は折れやすくて、登って落ちたら、けがをしてしまうこともあるので、ベテランの方がいないと、なかなか(伐採)できないという声もある」
富山県内ではほかにも、伐採をする自治会に対して、費用の一部を補助している自治体もありますが、伐採作業自体を代わりに行うのは珍しいといいます。10月27日までに15件の申し込みがあり、クマが冬眠に入る12月ごろまで支援を続けるとしています。