「性同一性障害」をめぐる法律の一部の規定について、最高裁判所は「憲法違反」とする初めての判断を示しました。

岡山県新庄村に住むトランスジェンダーの当事者が今回の判断を受けて、心境を語りました。

今回、最高裁で審理が行われたのは、戸籍上は男性で女性として社会生活を送っている申立人です。性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更するためには、特例法の規定で生殖能力を無くす「事実上の手術が必要」などと定められています。

申立人は「手術を受けなくても性別変更を認めてほしい」と訴えてきましたが、1審・2審では退けられていました。

最高裁は9月、申立人への審問を開く措置を取った上で、きょう(25日)手術をする規定について「憲法違反」とする初めての判断を示しました。

岡山県新庄村に住む、戸籍上は女性ですが、男性として生活を送る臼井崇来人さんです。

トランスジェンダーの臼井さんは2019年、最高裁に対して「手術を受けないままでの性別変更」を申し立てましたが棄却されていました。

今回の最高裁の判断について臼井さんは「社会での理解が進むことに期待したい」と述べました。

(臼井崇来人さん)
「(違憲判断について)よかったな、当然だと思っていたので、ひとまずほっとした。手術しなければあなたの性別は男に変えられませんよ。女にかえられませんよというのは違うよと最高裁が言ってくれたのはすごく大きな後ろ盾を得たなという感じがしました」

さて、現在の法律では戸籍上で性別の変更を認められるにはまず、2人以上の医師から「性同一性障害」との診断を受けた上で、「未婚である」ことや「生殖器を摘出する」などこちらの全ての条件を満たす必要があります。

2019年に臼井さんが行った申し立てに対して当時、最高裁は「合憲」とした上で、臼井さんが「手術を受けていない」ことを理由に、性別の変更を認めませんでした。

しかし、このとき一部の裁判官は「手術を必要とする規定は違憲の疑いが生じている」などの補足意見を付けました。そしてきょう、最高裁が新たに示した判断では手術を行う規定について初めて「憲法違反」だとしました。

今後、トランスジェンダーの人たちの新たな選択肢が生まれる可能性につながるのか、国会での議論の進展が注目されます。