6年ぶりに日本代表に返り咲いた今井月(23)。4月の代表選考会で200m平泳ぎを制し、復活の狼煙を上げた。一時は水泳を辞めようと考えるほどもがき続けた日々。復活の理由とアジア大会への思いを聞いた。
6年ぶりの代表復帰について
ーーーまずは2017年以来の日本代表復帰が決まった、その時の心境を教えてください。
今井月:
6年間代表に入れていなくて、代表権を獲得できたというのが久しぶりだったので、素直にすごく嬉しかったです。
ーーーその6年間というのは自分にとってどんな期間でしたか。
今井:
思い描いていた時間とは全く違くて、すごくもがいた時間だったと思います。
ーーー水泳を辞めたいという気持ちが芽生えたりしましたか。
今井:
芽生えていましたね。やっぱり東京五輪の年とか、大学2、3年生のときは、将来について考えなきゃいけない時期でもあったので、苦しい水泳を続けるという選択肢はすごく薄くなっていったのはあります。
ーーーその中でも水泳を続けてこられた一番の要因は何ですか。
今井:
周りの人から「まだやれるよ」と言ってもらえたり、色々な温かい言葉をかけていただいたというのもあるんですけど、でも一番は自分の中で「自分の水泳はこんなもんじゃない」と思う気持ちがあったから、ここで辞めないで続けてみようかなというふうに思ったので、自分が一番自分のことを信じていたのが大きいのかなと思います。

ーーーその時に支えになってくれた人や出来事はありますか?
今井:
もちろん家族は、環境を変えるときや一人暮らしをすると選択をしたときに、すごく背中を押してくれましたし、大学の同級生も背中を押してくれたので、そういうのはすごく励みになりました。
初めて平泳ぎで勝ち取った日本代表
ーーー6年前は200m個人メドレーでの代表入りでしたが、今回の代表に関しては平泳ぎで取った初めての代表だと思います。やはり平泳ぎについて思い入れが強いですか。
今井:
個人メドレーじゃなくて、ずっと平泳ぎで代表に入りたいって中学生の頃から思ってたのですが、なかなか目標は叶わなくて、今回平泳ぎで代表に入ることができてすごく楽しみです。また、200m平泳ぎが一番好きな種目ですし、自分はこの種目なら世界で戦えると思うので、200mの平泳ぎで世界と戦えるっていうのがすごく嬉しいです。
ーーー今回は代表選考会で個人メドレーにエントリーせず、平泳ぎ一本にかけてきたと思います。やはりそれほど思いが強かったんですか。
今井:
この1、2年間は、本当に平泳ぎ一本でやってきましたし、その気持ちからぶれずに向き合ってきたと思っているので、もう個人メドレーにエントリーすることなく、迷いなく200m平泳ぎで代表に入ろうと思っていました。
今井を支え続けた父 代表復帰でうれし涙
ーーー大切な人、家族に支えてもらった代表復帰。「代表決まったよ」と伝えた方はいますか。
今井:
今回の代表選考会は有観客だったので、父親も来てくれていて、ちゃんと目の前で決めることができたので、特に何も伝えてないですけど、すごく喜んでくれたのでよかったです。
ーーー久しぶりの有観客でしたが、お父さんは相変わらずビデオを撮ってくれていたんですか。
今井:
撮っていました。でも見ていないです…(お父さんより)良いカメラで撮ってもらえるから必要ないです(笑)


ーーー映像を送ってくれたりするんですか。
今井:
送ってくれていないですね。多分、父親が自分で見て喜んでいます。でも(池江)璃花子のお母さんが父の近くにいたみたいで、「お父さん泣いてたよ」と教えてくれました。
ーーやはりお父さんはすごく大事な存在ですか。
今井:
私が全然泳げていないときでも、ずっと私の水泳を信じてくれていたと思うので、父親も喜んでくれてすごく嬉しいです。
「戻ってこれたことに感謝」 アジア大会では金メダル目指す
ーーーアジア大会自体が初めてだと思いますが、何かイメージはありますか。
今井:
やっぱり日本の選手がすごく金メダルを取っているイメージがあります。ちょっとオリンピックに似ているというか、他の競技の選手も含めて、日本選手団で戦っていくっていう感じがするので、日本に良い結果を届けたいなって思います。
ーーーアジア大会での目標を教えてください。
今井:
アジア大会は去年延期になってしまったんですが、金メダルを目指してやっていきたいと思っています。日本代表として戦う試合で自分が金メダルを目指せる位置にいることがなかなかないので、ここまで戻ってこれたことに感謝しながら、上の目標に向かって頑張りたいです。
■今井月(いまい・るな)
2000年8月15日生まれ、身長166cm。岐阜県岐阜市出身、東洋大学卒業。
3歳で水泳を始め、中学1年生の時に初出場した日本選手権で3位に入り一躍注目を集めた。高校1年生でリオ五輪に出場。近年は日本代表の座から遠ざかっていたが、今年6年ぶりの復帰を果たした。将来の夢は、東京ドームの始球式で投げること。アジア大会では200m平泳ぎに出場。