東京五輪個人メドレー2冠の女王・大橋悠依(27)。五輪女王としての迷いがある中、今シーズンは200m個人メドレー1種目に絞って世界に挑んでいる。アジア大会でどんな活躍を見せてくれるのか。オリンピック3大会連続メダル獲得の松田丈志さん(39)が日本代表内定直後の大橋にその思いを聞いた。
東京五輪2冠後「迷い中 自分の記録・感覚を超えていくことに重点」
松田丈志:
東京五輪で2冠を達成されて、そこからの反動みたいなものもあったんじゃないかなと思うんですけど、今時点で東京五輪から今までの自分の心や体の波をどう受け止めていますか。
大橋悠依:
絶賛迷い中ですけど、迷い中というかうまくできない時と、うまく捉えられる時っていうのはやっぱりまだ差はありますし、選考会前は結構ワクワクしていましたけど、終わってみれば何かやっぱりダメだなみたいな気持ちがいっぱいあったりとかして…まあ付き合っていくしかないんだろうなみたいな感じはありますけど、ただ新しい選手もどんどん出てきている中で、やっぱり自分の記録を超えるというのが、順位でも上の方を狙っていける基準になると思うので、自分の泳ぎをすることだったり、自分の記録や感覚を超えていくことに重点を置けば、それが軸となるんじゃないかなと思います。
観客の応援が力に「いいレースをしたい」
松田:
迷い中という言葉がありましたが、ただそれでも歩みを止めていない訳じゃないですか。泳ぎ続けるというモチベーションというか、歩み続けるには何か理由があると思うんですが、そこはご自身でどのように考えていますか。
大橋:
やっぱり続けるという選択を自分でしたので、そこは全力でやり抜くということが責任だと思いますし、自分のやりたいことでもありますし、あと一人で水泳をやっているわけじゃないので、コーチだったり、トレーナーさんだったり、家族だったり、支えがある中で自分が続けられているので、やっと有観客になってきて、そういう身近な人達に泳ぎを見てもらえる機会があるので、やっぱりいいレースをしたいなっていうのが根本にあります。
松田:
確かに今回の選考会を見ていて有観客でお客さんの拍手や歓声があって、選手のSNSとかを見てもレース後に応援に来てくれた人たちと写真を撮っているのをあげていたり。やっと日常というかね、水泳の盛り上がる瞬間が出てきたなと思ったんです。それを見て僕も嬉しかったんですけど、選手としてはどうでしたか。
大橋:
いやぁ、やっぱりすごく嬉しかったですね。入場して席が埋まっていて、一応マスクしていれば声出しもOKだったので、名前を呼んでいただいたりとか、終わった後もこう待っていてくれる方がいらっしゃったりとかして、やっぱり応援されて力が出るというか、自分の実力を超える力が出ることってあると思いますし、見てくれている人がいいレースだったなって思ってもらえるようなレースをしたいという気持ちになりました。
アジア大会はパリ五輪の前哨戦 自分がどれだけいい泳ぎを出来るか
2018年アジア大会ジャカルタ、大橋は個人メドレー2種目で金メダルを期待されていたが、200mでは銀メダルと悔しい結果に終わった。
松田:
アジア大会もたくさんの人に見てもらって、できれば現地でもいっぱい応援して欲しいなって思うんですけど、大橋選手はどのようにアジア大会を捉えていますか。
大橋:
やっぱり中国、韓国にも若い選手とかどんどん出てきて、アジアのレベルも上がっていると思いますし、パリオリンピックに向けても前哨戦になると思うので、またやっぱりそこで自分がどれだけいい泳ぎができるのかっていうのが、鍵になってくると思います。

松田:
2018年を思い出していただきたいのですが。
大橋:
400mで勝った印象よりも200mで負けた印象の方が自分の中では強くて、でもタイム的にそんな悪くなかったんですよ。なので捉え方次第だなって本当に思いますし、でも今年もやっぱりアジアを盛り上げられるようにいいレースをしたいと思っています。
松田:
前回大会は400mで金、200mで銀だったわけですけど、今回は200mに専念ということで、この200mではどんなレースをしたいですか
大橋:
やっぱり中国の若い選手がすごく前半から行く選手がいるので、競り合って面白いレースをしたいというのが一番ありますし、その中でもパリ五輪を見据えて勝ち切らないといけないので、勝負、勝つということを目標に置いてやりたいと思っています。
松田:
アジア大会もたくさんの日本のファンが見てくださいます。最後にファンの皆さんに一言お願いします。
大橋:
メダルを目標に200m個人メドレーをしっかり泳ぎたいと思います。若手の選手からベテランの選手までたくさんの選手が頑張っている姿をぜひ応援してください。よろしくお願いします。
■大橋悠依(おおはし・ゆい)
1995年10月18日生まれ、身長174cm。滋賀県彦根市出身、東洋大学卒業。幼稚園の時に水泳を始め、2021年東京五輪では200m、400m個人メドレーで金メダルを獲得。日本女子史上初の1大会2冠という偉業を成し遂げた。アジア大会は25日の200m個人メドレーに絞って出場。