競泳日本代表キャプテン・入江陵介(33)。高校2年生で初めて代表入りした2006年以降、18年に渡って競泳日本を牽引している。今年4月の5度目のアジア大会に挑むベテランの思いを五輪3大会を共に戦った松田丈志さん(39)が聞いた。
入江陵介:
昨年から200mの方を少しストップして、100mの方にフォーカスしてきました。精神的、体力的にしんどい部分があったので、200mはちょっとお休みして100mのスピードに特化した練習をしてきました。
松田丈志:
100mに専念する難しさはありますか。
入江:
精神的な部分とか体力的な部分は非常に楽になっています。ただ自分のテクニックの部分はちょっと落ちているのかなと思ってしまいます。僕自身200mをやって来た時と100mだけにした時のタイムがあまり変わらない。むしろ今年に関しては落ちてしまっている部分がある。元々は200mで初めてアジア大会に出場したり、中距離寄りのスタンスでやってきて、得意な部分で泳ぎが育ってきたので、最近テクニックが落ちてきちゃっているのかなと思っています。
松田:
”世界一美しいフォーム”と言われたものを再び作っていく?
入江:
最近スピード重視になってしまっていたので、泳ぎのテクニックの部分が少しおろそかになっていたと思います。今後もっと大きな泳ぎを取り戻すようにしていきたいなと思っています。
松田:
自分が背泳ぎを引っ張っていくという気持ちは持ち続けていますか。
入江:
自分が背泳ぎを盛り上げていきたいという気持ちは常にあります。ただ若い選手にもっともっと来て欲しいという部分がもちろんあるので、今回嬉しいことに200mの方でも大学生の2人、竹原 秀一選手と、栁川大樹選手が新しく代表として入ってくれたのですごく心強いですし、ただ100mに関してはちょっとまだ育っていない部分が現状としてあるので、100mでも来て欲しいというのはありますね。
5大会目のアジア大会へー
松田:
5大会連続のアジア大会についてはどう思いますか。
入江:
アジア大会2006年のカタールからです。(松田さんとは)3回一緒に出ているのか…アジア大会は世界大会と違った独特の雰囲気があったり、選手村があったり、他の種目があったりして、すごく楽しい雰囲気があると思います。ただ中国の本気度がすごい、五輪以上に中国が怖いと感じるのがアジア大会なので、そこの雰囲気に飲まれないようにしたいです。ガチンコ勝負になってくると思いますし、今まで日本と中国の一騎打ちってなっていたんですけど、韓国も非常に力をつけてきているので金メダル争いはもっともっと力を入れて頑張っていかないといけないと思っています。
松田:
アジア大会でのライバル選手は誰ですか。
入江:
中国の徐嘉余選手ですね。自分自身が良いパフォーマンスをすれば金メダルは近づいてくると思うので、しっかり自分自身のレースに集中したいと思います。メドレーリレー、混合メドレーリレーにも出場する可能性があるので、沢山金取れるようにしたいです。
松田:
過去4大会のアジア大会での思い出に残っていることは何ですか。
入江:
2006年、2010年、2014年と200mで3連覇して、前回大会は全種目銀だったんです。5種目出て5種目とも銀だったんですよ。
松田:
全部徐嘉余選手が関わっているんですか。
入江:
全部徐嘉余選手が関わっていますね。5種目出て5種目とも負けた。非常に悔しい前回大会だったので、今回はしっかり全部金取れるようにしたいかなと思います。
松田:
レース以外の思い出に残っている事はありますか。
入江:
結構色々な友達ができるイメージがあります。他の競技の選手が同じ選手村にいるので新しい友達ができたり、国ごとの食堂の雰囲気とか美味しいご飯があるので毎回雰囲気を楽しんでいます。アジア大会は五輪の次に盛り上がるので、東京五輪は終わりましたけど、次の五輪を見据えてもチームジャパンとして大事な大会になると思うので、そういった意味も持って競泳チームはやっていきたいと思っています。
”日本代表初の平成生まれ”が最年長に—
松田:
入江選手が最年長の33歳で、最年少は16歳の成田実生選手。入江選手が初めてメダル取った時はまだ生まれていなかったことについてどう思いますか。
入江:
成田ちゃんの生年月日見て、「やばい。自分が金を取った時に生まれていない」みたいな話をしたんですよ、代表の中で。そう思うとすごいなって思うのと、自分が初めて代表に入った時も若い奴が入ってきたなって思われていたと思うんですよ。その時の一番上の先輩に。
松田:
当時入江選手は15、6歳?
入江:
16歳、高校2年生です。僕が日本代表初めての平成生まれだったんですよ。今や平成しかいないですからね。そろそろ令和入ってくるんじゃやないかと思って。

松田:
最年長として意識している事はありますか。
入江:
最年長で経験も一番多いですが、自分が前に出すぎてはいけないなと思っています。チームというのは全体で作っていくものですし、どんどん若い選手たちが引っ張っていく。結果だけではなく雰囲気や人間性でも中間の選手が引っ張って行かないといけないと思うので、前に出ることはあると思うんですけど、色々な選手を前に出して、色々な選手が考えるチームにしていきたいと思っています。
松田:
今シーズンと来シーズンの目標は?
入江:
今シーズンは今のところタイムがあまり良くないんですけど、しっかりと52秒台の真ん中を狙っていきたいと思っています。来年はパリ五輪があるので、しっかり出場権を獲得できるような一年にしたいと思っています。またメドレーリレーに関してはメダルのチャンスが非常に高くなった現状だと思うので、第一泳者としてしっかりと貢献できるように、来年のパリ五輪で表彰台にもう一度上がれるようにしたいかなと思います。
■入江陵介(いりえ・りょうすけ)
1990年1月24日生まれ、身長178cm。大阪府大阪市出身、近畿大学卒業。高校2年生のときに日本代表デビュー。以来、18年間に渡り日本代表を牽引している。2012年ロンドン五輪では200m背泳ぎで銀メダル、100m背泳ぎで銅メダル。アジア大会では、4大会で計14個のメダルを獲得している。入江の背泳ぎは、額にペットボトルを乗せながら泳げるほど安定していることから”世界一美しいフォーム”と表現される。アジア大会は24日の100m背泳ぎに出場。