先月15日、ウクライナとポーランドの国境のとある場所で、NATOとウクライナ軍の秘密協議が行われました。そこで決まったのは、反転攻勢の戦局を打開する特別な作戦。将軍達の議論は5時間に及びましたが、元NATOの高官は、互いに不満をぶつけあう激しい攻防があったと証言しています。NATOとウクライナ軍は、なぜ衝突したのでしょうか。秘密協議の内幕です。

元NATO高官 ジェイミー・シェイ氏
「まずウクライナ側は、『もっと武器が必要だ』と会談で言いました。そして、彼らは、F16や射程距離の長い大砲、特にATACMS(エイタクムス)と呼ばれる兵器を要求しました。また、ロシア軍の後方の大砲陣地や兵站補給施設まで届くミサイル。例えばイギリスのストームシャドウの供与を増やすことを要求したのです」
NATOに38年間勤務した元高官で現在はイギリスのエクセター大学の教授、ジェイミー・シェイ氏。8月中旬に行われたウクライナとNATOの秘密会談では、お互いに不満をぶつけ合う激論が交わされたと話します。

元NATO高官 ジェイミー・シェイ氏
「ウクライナ側は、『武器の供給が遅すぎる、控えめすぎる。もっと早く、もっと必要だ。武器には、より攻撃的な無人偵察機や、特に長距離砲、地上・空中の巡航ミサイルも含まれるが、これらを手に入れない限り、我々ができることは限られる』とNATO側に訴えたのです。しかし、これを聞いたイギリスやアメリカの将軍たちやNATOの欧州連合軍最高司令官・カボリ将軍らは、『ウクライナは戦術に関して我々の忠告を聞いているのだろうか』という気持ちがあったでしょう。何故なら、反転攻勢に際し、NATOからウクライナ側へのアドバイスは、『敵の最大の弱点である地点を選び、そこに攻撃を集中させる。そして防御に穴を開け、その穴を突く』というものでした。しかし、ウクライナはそれをやっていなかったからです」

反転攻勢の開始後、ウクライナ軍はザポリージャやバフムトなど全長およそ1200キロにも及ぶ前線に広く展開。ロシア軍の弱点を見つけようと規模の小さなピンポイント攻撃を繰り返していたと言います。
これに対しNATO側は、ピンポイント攻撃は多くの労力と弾薬を無駄にしていて、時間もかかりすぎていると、批判的に見ていたと言うのです。
元NATO高官 ジェイミー・シェイ氏
「西側が常に言ってきたのは、『南部に兵力を集めて進軍する』という作戦でした。しかしウクライナはまだ明らかに東部のバフムトを取り戻そうとしていました。アメリカの助言は、『バフムトは重要ではない』というものでした。ウクライナ軍はそこであまりにも大きな損害を被っていました。ウクライナにとってバフムトは象徴的な存在になっていますが、アメリカは『頼むから、そこから一線を引いてくれ』と言っていたのです。しかしウクライナ人は誇り高い。自分のやり方でやりたいのです」
誇り高いウクライナ人とNATOの議論は、5時間に及びました。そして…