不動産取得が最大の目的だったヨドバシ。そごう・西武の百貨店事業と池袋の将来は?

百貨店事業とどこまで真摯に向き合ってきたのだろうという疑問が残る売却劇だ。売却の構造を見るとそれが透けて見えてくる。

セブン&アイHDはそごう・西武を売却した。価値は2200億円だとされているが、負債があり、債権放棄もするので実質の譲渡額は8500万円ぐらいにしかならない。ところが、そごう・西武最大の資産である池袋や渋谷、千葉の土地建物といった不動産を、ヨドバシHDは3000億円で買う。

――結局ヨドバシHDがそごう・西武の持っていた土地を手に入れることが最大の核だということになるのか。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
ファンドを絡めていることで、おそらく会計処理のマジックを使ってヨドバシにとってもメリットがある形になるということなのでしょう。実質的に直接不動産だけ買うという手もない話ではないです。百貨店事業をどこまで本気で続けていくのかというと大きな疑問符がついているということだと思います。

――今後そごう・西武の百貨店事業は生き残っていけるのか。

TBS経済部 出野陽佳記者:
今の形での営業を続けられる時間は長くないという声が大半です。例えば池袋店では1階部分にルイ・ヴィトンといった高級ブランドが入っていますが、これを移転させるとなれば、それなりのコストもかかりますし、そもそも今の一等地から移動して営業を続けることにブランドが納得してくれなければ、百貨店から出て行ってしまう可能性もあるわけです。関係者の中には2、3年程度で立ち行かなくなるといった心配の声をもらす人もいました。

西武池袋本店は全体の約35%の売上げを占めている旗艦店で、80年代は業界1位の売り上げを誇り、今も業界3位だ。日本で初めて海外有名ブランドを店内に誘致した先駆的な百貨店だった。

――百貨店として縮小していく、場合によってはなくなってしまうことがわかっている構図の中に、セブン&アイはそごう・西武を押し出したということだ。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
あれだけの売上げがまだあるので、セブン&アイが池袋の資産を使いこなして、新しい業態を作ることもできたのではないかと思うのですが、経営がやる気をなくしてやめてしまうという方向に舵を切ったということです。

西武池袋本店は駅前というよりも駅そのものだ。池袋はビックカメラの発祥の地でもあり、元々三越だった店舗もある。

――西武池袋本店はヨドバシにとっても悲願の場所でもあるということなのだろう。再開発していくとなると相当ポテンシャルの高い場所だ。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
豊島区自体が池袋全体を作り変えようとしていて、もう1回若者の集まる街として磨きをかけていこうとしているのですが、百貨店が中核ではないのかもしれません。ヨドバシがどういう使い方をしていくのかによって池袋の盛衰が決まっていくような感じもします。

(BS-TBS『Bizスクエア』 9月2日放送より)