熊本のアサリについて意外なことがわかりました。

20年前、熊本のアサリは7000トン近く獲れていましたが、3年前の2020年はわずかに21トン。漁獲量激減の背景には、海水温の上昇などに加え、エイによる捕食も問題となっていました。
しかし実は、アサリを狙っていたのはエイだけではないようです。
育てているアサリの赤ちゃんたちが…
干潟一面に群がる鳥。何かを食べているようです。
この映像を撮影したのは長年、有明海の生態系異変について研究している熊本県立大学学長の堤裕昭(つつみ ひろあき)教授です。

堤教授「これはオナガガモですね。勢いよくたべてますがアサリを食べちゃうんです」
アサリの資源回復のため人工種苗の技術開発にも取り組んでいる堤教授。この日やってきたのは熊本市の白川河口です。

地元の漁協と協力しアサリが育つ方法を模索しています。
岸から1.4キロ、アサリが棲みつきやすいよう漁協が砂を撒いた場所に向かいます。
砂を掘ってみると…いました!アサリの稚貝です。

「これが今年のゴールデンウィークに生まれたやつ」
アサリの稚貝が出荷できる大きさになるには1年半から2年近くかかります。
堤教授「10センチ四方の中に30個体~40個体はいるので、1平方メートルにするとその100倍だから3000~4000個体ぐらい、そうすれば漁場として成り立つ。あとはコストと効率の問題ですよね」

幸い、今月初旬の大雨の影響は免れたようですが、堤教授は、アサリ減少の原因として近年、頻発する集中豪雨や海水温の上昇などに加え、ナルトビエイなどによる食害の影響が大きいと考えています。
そうした中、気が付いたことがありました。

「なぜか、冬になると貝がまとまって減るんで、エイは来ないはずなんです、冷たい水が嫌いなので。なのに冬場にアサリやほかの貝が無くなっちゃうんでおかしいな・・とおもってきたら、カモがいっぱい群がっていた。」
それが冒頭の干潟で貝類を食べるカモの大群です。

2014年ごろから2000羽近いカモが干潟に飛来するようになったといいます。
堤教授が現在進めている実証実験では、こうした食害を防ぐため防護ネットを張って稚貝を保護する手法を模索しています。

堤教授「熊本にはおいしいアサリ弁当とか産物がたくさんあったんです。それをもう一回復活して食べたいですね。その一心でやってるんですけど」

条約で保護されているカモ
野鳥の生態に詳しい日本野鳥の会熊本支部にも話を伺ってみました。
「白川河口で確認されているのはオナガガモやヒドリガモ。通常、淡水域にいて藻などを食べるが干潟でアサリを食べると聞き、非常にびっくりしている」

カモなどの野鳥による食害は荒尾干潟などでも見られるそうですが、県によりますと荒尾干潟は、ラムサール条約で野鳥の生息域として保護されているので、追い払ったり、駆除したりということは事実上難しいようです。














