2021年7月、静岡県熱海市伊豆山で起きた土石流災害から7月3日で2年が経ちました。介護タクシーを営む河瀬豊さん・愛美さん夫婦は土石流が熱海のまちを襲ったあの日、命がけで住民を助け、そしていまも被災地の住民のためにできることを探し続けています。なぜ、そこまで熱海のために尽くせるのか?2年の節目となり、その理由を語り出しました。
3日の午前10時28分、土石流が発生した時間です。黙とうをするのは土石流の被害に遭った熱海市伊豆山地区で介護タクシーを営む河瀬豊さんです。
<河瀬豊さん>
「いろんな思いがありますね。実際に亡くなった人の中で、僕たちが関わっていた利用者さんもいたし、日常的にあいさつとか声をかけたりした人もいたので、そういう人たちのことを思ったりとか」
あの日、土石流が押し寄せる中、妻の愛美さんと共に車いすを持って住民の家を訪ね、12人を助け出しました。土石流災害から2年となった7月3日、河瀬さん夫婦はいつもと変わらず、介護タクシーで送り迎えをしていました。
<河瀬豊さん・愛美さん>
「こんにちは。武内さん。伊豆おはなです。お迎えに来ました」
武内トシ子さん・85歳。以前は、趣味のフラダンスで海外の舞台に立ったこともあります。
<武内トシ子さん>
「自分のことは自分でできるようにならなきゃね。こんなにみんなに迷惑かけてるから。そうなんですけど、なかなかそれができなくて」
脳梗塞の後遺症で左半身がまひし、思うように歩けません。
<河瀬愛美さん>
「はい、じゃあ、傾けます」
武内さんの自宅の隣には30段の階段が。熱海市は風光明媚な観光地の顔を持つ一方、坂や階段が多く、高齢者には決して優しい地形ではありません。65歳以上の住民が5割ほどをしめる熱海市では、介護タクシーなど人の手を借りなければ病院や買い物すらままならない人が多くいます。
「この街のために」と従業員たった3人の会社ながら、ほぼ休みなく介護タクシーを走らせ続ける河瀬さん夫婦。そこまで尽くすのには、ある理由がありました。消防署で救命救急の研修を受けていた夫の豊さんが語り出しました。
<河瀬豊さん>
「見ていただきたい写真があるんですけど、43年前の僕です。家族が119番通報して、救急隊がすぐ来てくれて、迅速に病院に搬送してくれて」
豊さんは小学4年生の時、沸かしすぎた風呂に落ちて全身の70%にヤケドを負い、生死をさまよいました。
<河瀬豊さん>
「その時に支えていただいた人には直接お礼とかできないので。いま本当に困っている皆さんを手助けすることで、当時助けていただいた人への恩送りという思いでいまやっています」
2年前の救助の際に苦労した経験から、新しい機材も導入しました。
<河瀬豊さん>
「前輪が小さいから段差とか砂利とかで引っかかっちゃうんですよ。それで前輪を上げてこういう風に移動するとすごく楽なんですよ」
これで車いすに乗せても土砂に遮られることなく前に進めると言います。いまも自分たちだからできることを探し続けています。
<河瀬豊さん>
「2年間、早かったような、まだまだのような何とも言えない感じですね。『あなたたちのおかげで病院に行けるわ』なんて言ってもらえるので、続けてこれて良かったし、これからも可能な限り続けていきたい」
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