軍事転用可能な機材を輸出したとして逮捕・起訴され、その後、一転して起訴が取り消された機械メーカーの社長らが国と東京都に賠償を求めている裁判で、起訴後にがんで死亡した元社員の長男が法廷で証言し「刑事司法の大きな失敗だ」と警視庁や検察を強く非難しました。

横浜市の機械メーカー「大川原化工機」の社長や元社員の相嶋静夫さんら3人は、軍事転用可能な機材を輸出したとして、2020年に警視庁公安部に逮捕され、東京地検によって起訴されました。

相嶋さんは勾留中に体調を崩し、亡くなっています。

しかし、東京地検はその後、起訴を取り消していて、社長や相嶋さんの遺族らは違法な逮捕だったとして、国と都に対しておよそ5億7000万円の損害賠償を求める訴えを起こしています。

東京地裁ではきょう、亡くなった相嶋さんの長男への尋問が行われ、長男は「逮捕されるべきではない人が逮捕され、起訴されるべきではない人が起訴された。3年にわたる捜査のなかで、誰も止められなかった。刑事司法の大きな失敗だ」と警視庁や検察を強く非難しました。

長男は相嶋さんが晩年に移住した静岡県で薪ストーブをつくり、孫と遊ぶことをなにより楽しみにしていたとし「良い時間がいつまでも続けば良いと思っていた」と振り返りました。そして「仕事を誇りに生きてきた父が、人生の締めくくりで仕事を社会から否定されるような形となったことがとても悔しい」と述べました。