リニア新幹線の工事で静岡県外に流出した水を戻す方法として注目される「田代ダム案」をめぐる動きが一歩前進です。JR東海の丹羽社長は6月15日、県や流域の地域から田代ダム案をめぐり理解が得られたとして、速やかに協議を進める考えを示しました。

<JR東海 丹羽俊介社長>
「速やかに他の関係者にも確認した上で東京電力との協議を進めたい」

JR東海の丹羽俊介社長は田代ダム案の協議に向け、ダムを管理する東京電力と速やかに協議を進めたいと話しました。

<JR東海 丹羽俊介社長>
「協議はこれからということになるので、大井川流域の皆さまにも安心していただけるように、田代ダム取水抑制案の実現に向けてしっかり取り組んでまいりたい」

いわゆる「田代ダム案」とは、大井川の水が流出するとの懸念に対してJR東海が静岡県などに示していた解決案で、リニア工事で流出する分、田代ダムの取水を抑制して相殺するという考え方です。

JR東海は2023年3月、田代ダム案を県や流域の自治体でつくる「大井川利水関係協議会」で説明、ここでJR東海が東京電力と協議に入ることは大筋合意されたはずでした。それでも県は、田代ダム案について慎重な姿勢を貫いていました。

<静岡県 川勝平太知事>
「水利権についてはまだクリアになっているという風には思っていない」

その後、JR東海が東京電力と協議を始めるために必要な前提条件についての文言の確認や修正が行われ、6月14日、県がJR東海に表現を再修正することで、流域の市や町の合意が得られたことを伝えました。

再修正した前提条件には、田代ダム案の実施によって東京電力の水利権を侵害しないことや大井川利水関係協議会のメンバーが田代ダム案を根拠とした水利権を主張しないことなどが明記されました。

県はJR東海に東京電力との協議を進めるよう伝え、県が歩み寄る形で田代ダム案をめぐる動きは一歩前進しました。

<島田市 染谷絹代市長>
「これは大変大きな第一歩。田代ダムの取水抑制案は、いま考えられる中では一番有効な方策」

大井川流域の島田市の染谷市長は15日、田代ダム案の協議に向けた期待を語りつつ、ここまで時間がかなりかかったので、今後はスピード感が必要だと話します。

<島田市 染谷絹代市長>
「流域の皆さんが不安や懸念を持っている中、払拭できるようにスピード感を持ってもっと分かりやすい説明をしながら話が前に進んでいけばと、ひたすら願っている」

JR東海の丹羽社長は東京電力からも前提条件について理解が得られると考えていると話していて、今後、田代ダム案については具体的な協議に進む見込みです。