福岡市美術館で、19世紀末のヨーロッパで一世を風靡した画家アルフォンス・ミュシャの展覧会が開かれています。ミュシャの心情をあらわした異色の作品「星」に迫ります。

◆「星:月光」と「星:北極星」の連作パネル


魅惑的な目でこちらを見つめる女性(「星:月光」)。もう一方は、手で光をつかんでいるような瞑想的な雰囲気が描かれています(「星:北極星」)。ミュシャの作品の特徴である装飾性が抑えられ、色彩も暗い異色の作品です。

それまで一般庶民でも気軽に購入することができる装飾パネルを手がけていたミュシャでしたが、芸術家として心情に変化が現れます。

◆最後の「装飾パネル」作品に


美術史家 小柳由紀子さん「装飾パネルの注文もどんどんきて非常に忙しいんですが、自分が求めているのはこうしたものではないんじゃないか、ヒエラルキーというか、“純粋芸術、絵画、彫刻”に対して、“応用美術、製品に付属した物“は『下に見られる』というジレンマがあって。元々、夜がテーマなので落ち着いた色彩なんですけれど、心情的なものも反映した内省的な作品になっていると思います」

装飾パネルの制作はこの作品が最後となりました。

◆美術館で撮影可能


間接的な夜の光が放たれる幻想的な作品には、ミュシャの心情が隠れています。「ミュシャ展 マルチ・アーティストの先駆者」は6月4日まで、福岡市美術館で開かれています(月曜休館)。会場内の全作品を撮影できます(フラッシュ・動画は不可)