近年、減少傾向にある浜名湖産のアサリを回復させようと地道に活動する団体があります。湖に肥料をまくことでアサリが生息しやすい環境をつくり出そうという取り組みで、早くも成果が出始めているようです。

浜松市西区舞阪町の和食店「浜菜坊」の名物は、地元・浜名湖産のアサリの酒蒸しです。しかし、このメニューが存続の危機に立たされています。

<浜菜坊 店主 岡田謙さん>
「絶対数が少ないんで、どうにもならない時もあります。小ぶりにもなってきちゃってます。前はおみそ汁もアサリを出していたんですけど、やめて生海苔のおみそ汁に替えたりもしています」

理由は浜名湖産アサリの激減です。2010年の漁獲量は5000t以上ありましたが、その量は減少し続け、2021年の漁獲量はたった100t程度になってしまったのです。

アサリの激減によって浜名湖の春の風物詩だった観光潮干狩りは、5年連続で中止になっています。

この流れを変えたいとひたむきに活動するのが「浜名湖の生態系の回復を図る会」。会長の加藤順久さんが注目したのは…畑用の肥料です。

<浜名湖の生態系の回復を図る会 加藤順久会長>
「窒素・リン・カリウムが植物プランクトンに必要なんですけど、特に大切なのがリンなんです。リンの割合が一番高いのが鶏のフン」

実は同じような取り組みは、すでに佐賀県でスタートしています。養鶏業者から出た廃棄物をいわば「海の肥料」に変えることで、きれいになり過ぎて栄養分が減った状況を改善するという取り組みです。浜名湖も同じような状況に陥っていると考えた加藤さんたちは、この事例を取り入れて浜名湖のアサリを復活させようとしているのです。

畑用の肥料を砂浜に埋めます。埋めた肥料が満潮になった時、少しづつ湖に染み出ていくことでプランクトンが増加、それをエサとして食べるアサリも増えるという考えです。2年前から春と秋を中心に月2回のペースで、海岸約500mにわたり40袋の肥料を埋め続けました。地元の住民たちは、2022年ごろから海岸の変化を実感していると言います。

<地元の住民>
「加藤さんが(肥料を)まくようになってから本当によく採れるようになったと言ってます。地元住民が言うんだから間違いなしです」

コツコツ肥料を与え続けた結果、このエリア限定ですが、アサリが増えたことが確認されました。21日は限定的な潮干狩りイベントを開催、約200人が海岸に集まり、思い思いにアサリを採って楽しんでいました。

<参加した親子>
「いっぱい採れました。石とか探って見つけるのが楽しいです」
「昔来た時は(貝が)小さくてあまり採れなかった。いま来たら全然大きくて。びっくりした」

加藤さんは今後も活動を続け、浜名湖の生態系の回復に貢献したいと力を込めます。

<浜名湖の生態系の回復を図る会 加藤順久会長>
「水がきれいなままで、生態系は昔の何でも採れる浜名湖にしたい。それが目標です。きっとできると思っています」