娘のために戦うシングルマザーのボクサーの奮闘を描いた映画が29日から高知で上映されます。

手がけたのは、映画監督と高知県香南市出身プロデューサーの夫妻で、2人に作品への思いを聞きました。29日から高知で上映が始まる映画「レッドシューズ」。娘と暮らしながらボクシングに打ち込んでいたシングルマザーが主人公です。

仕事が続かず経済的に苦しくなる中、“ある事件”をきっかけに娘と一緒に暮らせなくなり、“ファイトマネー”で娘を取り戻そうとボクシングの世界戦に挑む…というストーリーです。

映画を手がけたのは雑賀俊朗(さいが・としろう)監督と、妻で香南市出身の濱口典子(はまぐち・みちこ)プロデューサーです。「女性ボクサー」が主人公のこの映画、製作のきっかけは雑賀監督の高校時代に遡ります。

(雑賀俊朗 監督)
「『ロッキー』を観まして、ちょっと年齢わかっちゃいますけど…。それで興奮して『こういう作品が(地元の)北九州にもあったらいいな』というのが高校時代に思っていて。あとは、うちらの業界にシングルマザーの方、バツ1、バツ2、バツ3、っていう方がたくさんいらっしゃって、いろいろ相談を受けたりしていて、で、『シングルマザーでボクシング』、『母と子の愛の物語』を作れないかな、と思って作った」

(濱口典子 プロデューサー)
「この企画ができたのが2005年くらいで、その時期にまだ『女子ボクシングの映画』っていうのが皆さんまだピンとこなくて、なかなか製作委員会を組める状態ではなかった。それが、だんだん最近、女子ボクサーがプロでも出てきて、やっと製作委員会を組むことができたので…台本自体は、もう…17年?」

(雑賀俊朗 監督)
「そうだね、17年前からもうできていて…」

(濱口典子 プロデューサー)
「…なので『やっと』って感じですね」

撮影は雑賀監督の地元・北九州でのオールロケ。当初は2021年1月から行われる予定でしたが、半年近く延期されるなど、コロナ禍の撮影は苦労の連続だったといいます。

(雑賀俊朗 監督)
「『いざ撮影に入る』という時の3日前に緊急事態宣言が出された。エキストラを、正式にフィルム・コミッションから募集がかけられなくなったので、私の高校の仲間とかに電話して『きょう通行人が足りないんだけど…』みたいな、そういうことで毎日やっていた」

こうした中でも主演の朝比奈彩(あさひな・あや)さんは撮影のために1年間ボクシングで身体を鍛え、作品の中でもその腕前が光っています。

また主題歌は四万十市出身の岡本真夜(おかもと・まよ)さんが手がけ、自身も1人の母としての思いを歌に綴っています。

こうして出来上がった映画には、監督、プロデューサー、それぞれの熱い思いが込められています。

(濱口典子 プロデューサー)
「例えば『お金がなるべく短時間で稼げる』という風にシングルマザーは行きがちだが、自分のやりたい仕事(ボクサー)をやることで自分の自尊心・生き方もちゃんと保ちつつ、子どもも育てて、子どもも親の背中を見て『一緒に』っていう…。自己犠牲をせずに両方ちゃんと生きていけるような、『シングルマザー頑張れ』みたいな映画になってほしい」

(雑賀俊朗 監督)
「こういう時代だからこそ『母と子』『家族愛』、『何・誰が自分にとって一番大切なのか』というのをすごく強く感じられる作品なのかなということと、主人公が一番人生の中で上手くいかない『どうしたらいいんだ』ともがきながら生きていく姿を、主人公だけじゃなくて『あなたの物語でもある』ということで、一緒に応援しながら見ていただけるとうれしい」

映画「レッドシューズ」は29日から高知市の「あたご劇場」で上映が始まり、雑賀監督と濱口プロデューサーが舞台挨拶を行います。