急速な利上げなどが原因で銀行破綻が相次ぐなど金融不安が広がる中、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は3月22日、インフレの抑制を優先し0.25%の利上げを決めた。
FRBは“利上げ停止”検討もインフレ退治を優先 金融不安は払拭されず

銀行破綻が相次ぎ不安の火種が残るアメリカでは、FRBが優先したのは金融不安の封じ込めではなくインフレ退治に向けた利上げの継続だった。FRBは22日、政策金利の誘導目標を0.25%引き上げ、年4.75から5%とすることを決めた。

FRBの利上げは2022年3月にゼロ金利を解除して以降9回連続で、政策金利の上限は5%に達する。過去2週間で銀行の経営破綻が相次いだことから、利上げが見送られるとの見方も出ていたが、インフレの抑制を優先させた形だ。

22日のニューヨーク株式市場のダウ平均株価は、注目の年内利下げの可能性は薄いとして、前日から530ドル安の3万2030ドルで取引を終えた。
いまだ道半ばのインフレ退治に加え、今後、金融不安への対応も迫られるFRBは、これまで以上に難しい舵取りを迫られることになりそうだ。ワシントン支局の土居一雄記者に聞く。

――利上げ見送りかという見方もあったが、結局0.25の利上げだった。その理由は何か。
ワシントン支局 土居一雄記者:
ひと言でいえば、想定以上にインフレ圧力が強く、思ったように物価が下がってこないためです。ただ、パウエル議長自身が利上げの停止を検討したと明らかにしていますので、悩んだ末のギリギリの判断だったと思います。
FRBが導入した緊急の資金繰り支援枠の利用は22日の時点で536億ドル、7兆円に達し、多くの銀行が最後の貸し手であるFRBに資金繰りを頼っているという現状が鮮明になっています。

――アメリカの金融当局は今回の金融不安をどのように位置付け、どう対処しようとしているのか。
ワシントン支局 土居一雄記者:
リーマンショックの時のように金融システム全体にリスクをもたらすとは捉えていません。現時点では日米欧6つの中央銀行によるアメリカドルの供給拡大や個別銀行の預金保護などで、不安を抑え込もうとしています。一方で、イエレン財務長官は24日、FRBのパウエル議長ら金融当局者と緊急の会合をオンライン形式で開きました。財務省によると、ニューヨーク連銀の担当者から市場の動向について説明を受けたほか、銀行部門の現状について議論し、一部の金融機関はストレスを受けているもののアメリカの銀行システムは健全で強靭であることを確認したということです。
週末の市場に安心感を与えるメッセージを打ち出すという目的もあったと思いますが、24日はドイツ銀行の株価が一時15%近く下落するなど、ヨーロッパ市場が軒並み下落しましたので、今後の対応などについても話し合ったものとみられます。いずれにしても金融不安の払拭にはまだまだ時間がかかりそうです。