東日本大震災から12年、政府は原子力政策を大きく転換したと受け取れる閣議決定をしました。議論の進め方や決定の仕方に問題はなかったのか。政府諮問機関の原子力委員会で、かつて委員長代理を務めていた長崎大学の鈴木達治郎教授は「原子力政策の大転換だ」と指摘しています。
◆「60年超え原発の稼働はやめろ!」

3月11日、東日本大震災から12年を迎えました。
RKB小畠健太「福岡市天神です。東日本大震災の時間帯にあわせて開かれたデモ集会には、多くの人が集まっています」
福岡市でも原子力発電所の運転に反対する約200人が抗議の声を上げました。

抗議デモ「60年超え原発の稼働はやめろ!」
◆原発の運転期間“原則40年、最長60年”

2011年3月、福島第一原子力発電所で起きた事故。福島県内の広い地域で「帰還困難区域」が設定され、多くの人がふるさとでの生活を奪われました。当時の民主党政権は、原発の安全性を担保する独立した機関として、「原子力規制委員会」を設置したほか、原発の運転期間を原則40年、最長60年として、「原子力への依存度をできる限り低減する」方針を決めました。その方針はずっと引き継がれてきましたが…
◆岸田総理「原子力を最大限活用する」

岸田総理「次世代革新炉への建て替えや、運転期間の一定期間の延長を進めます」
岸田総理は先月、脱炭素社会の実現などに向けて「原子力を最大限活用する」とした基本方針を発表、その後、関連する法案を閣議決定しました。その内容には、最長で60年としてきた原発の運転期間を延長できるようにする、次世代型革新炉の新設を政府が後押しして進める、廃炉・放射性廃棄物処分の体制を強化する、ということが盛り込まれています。
◆鈴木教授“原子力政策の大転換だ”

政府諮問機関の原子力委員会で、かつて委員長代理を務めていた長崎大学の鈴木達治郎教授。今回の政府の方針転換について「脱炭素社会の実現」を口実にした原子力政策の大転換だと指摘します。
長崎大学 鈴木達治郎教授「今回の閣議決定の中には、(元々あった)原子力依存度を低減するという文章はないので、どう考えても政策転換というふうに解釈されてもおかしくはないと思います。今の電力危機、価格高騰をうまく利用して原発政策転換を法律にしてしまおうっていう、そういう動きに見える、見えますよね」
今回の政府の方針によると、安全審査などで停止していた期間を繰り越して、最長60年とした期限を超えての運転が可能になります。運転期間の延長とその安全性について、原子力規制委員会でも4か月にわたり議論が行われてきました。
原子力規制委員会 石渡明委員「この改変、法律の変更というのは科学的技術的新知見に基づくものではない。安全側への改変とも言えない。こうしたことにより、この案に反対致します」














