※町田満彩智アナウンサー
「そばの香りがしっかりと感じられます。弾力があって、のどごし抜群です。ほっとするような優しい味わいですね」

今や、弘前市のそばの名店とされる「彦庵」。しかし、石戸谷さんは修行を終えたあと、東京での独立開業を目指していたといいます。

※彦庵 石戸谷治彦さん
「最初は東京で小さい店舗を仮に押さえて、東京でやろうと思っていた。だけどやっぱり地元弘前には、親も親戚も知り合いもいるし。それ(完全自家製粉)を持ってきてこっち(地元)でやったら、逆に高い壁なんじゃないか。やりがいがあるんじゃないかと思って」

そばを打つ石戸谷さん

弘前市は老舗そば店がひしめく地区。そこに完全自家製粉のそばが受け入れられるのか、石戸谷さんはあえて「高い壁」に挑戦してみることを決めたといいます。そして、もう一つ。改良が進むそばの品種ではなく、地元で作り続けられてきた在来種を使うことにも思い入れがあります。

※彦庵 石戸谷治彦さん
「できるだけ地元のものを使いたいなと思ってるね。岩木山麓とか、嶽とか。今は黒石の牡丹そばっていう在来種。在来種だから粒は小さいけれど、良いバランスだよね。近場でとれるので、これいいなと思うものをなるべく使っていきたい」

「牡丹そば」は収穫量が少ないほか生産に手間がかかるとして今は、ほとんど作付けされなくなり、その稀少さから幻のそばとも呼ばれてます。ただ、自家製粉との相性は良く、特有の甘みや香りが立つということです。舌先をくすぐる粗挽きのそばの完成まで多くの壁を乗り越えてきた石戸谷さんの原動力は、修行した店で学んだ開拓者精神だと言います。

石戸谷さんが打ったそば

※彦庵 石戸谷治彦さん
「師匠は亡くなってしまったけれど、いつでもぷらっと来ても『まあなかなかのもんじゃねえか』と言ってもらればいいなという気持ちでやっている。やれる限りのことはしたいなと思って。そばの良さ、そのままをいかして、ころさないように。そのために、やれることは精一杯やる」