中国の軍事的圧力が強まる中、台湾は兵役義務を4か月から1年に延長することを決めました。対象となる現在の高校生たちに思いを聞きました。

今週、開幕した中国・全人代でも取り上げられた台湾問題。

中国 李克強首相
「『独立』反対、祖国統一促進を貫き、両岸関係の平和的発展と祖国の平和的統一への道を歩む」

表現ぶりはソフトにも感じますが、台湾は危機感を強めています。こうした中。

台湾 蔡英文総統(去年12月)
「自衛能力を強化してこそ国家の安全と利益を守り国際的な支持を集めることができます」

来年から18歳以上の男性の兵役義務を、これまでの「4か月」から1年に延長することを決定。1月の世論調査では7割を超える人が支持しています。

記者
「すごいですね、この公園。戦車が2台、あちらにはりゅう弾砲、戦闘機もあります」

台湾北東部・宜蘭県。新兵の訓練が行われる地域です。公園には国防部が寄贈した戦車などが置かれていました。

生徒
「(発射時の)反動は強いですか?」
先生
「バーン!だ」

高校3年生の盧さん(17)と、呉さん(17)。2人は兵役延長の最初の対象となります。盧さんは進学希望のため、入隊は大学卒業後だといいますが。

盧さん(17)
「(兵役延長は)とても嫌です。1年も時間を取られると就職に影響が出ると思います」

はじめ抵抗を感じたという呉さんは。

呉さん(17)
「先生が『体重をオーバーすると(兵役の)検査に不合格になる』と言っていたので、そうしようかと考えたこともあった。でも冷静になってみると(兵役は)人生に必要なプロセスだと思うようになりました」

兵役の延長が、安全保障上有効だと思うか、聞いてみると。

呉さん(17)
「有効ではないと思います。兵役延長は台湾が戦争を準備していると中国に思わせてしまい、攻めてくるかもしれません」

一方で、兵役延長は必要だと考える若者もいます。カメラが趣味だという高校1年生、郭さん(15)です。

郭さん(15)
「もし中国が本当に台湾に攻め込もうとした時に、抵抗することができれば、それだけより長く民主的な生活が送れます」

美術品の修復が仕事の郭さんの父親(45)は、20年あまり前、2年の兵役を経験しています。今回の兵役延長には賛成ですが、親子でこんなやりとりも。

郭さん(15)
「兵役延長は中国をけん制することだから、それを成功だと思えば効果があるけど、中国が挑発と受け取ればマイナスです。模範解答はないよ」
郭さんの父親(45)
「相手の考えをコントロールすることはできないけど、あらかじめ準備することはできると言いたい…簡単に答えられるテーマじゃないね」

高まる防衛意識の一方、当事者となる台湾の若者たちの胸のうちは、複雑なようです。