高速・大容量で、情報のやり取りができる最新の通信システム「5G」。この範囲、用途を限定して使う「ローカル5G」が今、注目されています。
携帯各社が整備する全国的なものとは違って、地域や産業のニーズに合わせ、特定の建物や敷地といった限られたエリアではりめぐらせるネットワークのこと。大手携帯会社の5G網が整備されるまでに時間がかかるので、これとは別に、いち早く地域で活用してもらうというねらいがあります。
このローカル5Gを農業分野で活用しようという実証事業が北川村で始まっています。どういった取り組みなのか?取材しました。
実証事業は、代表機関であるNTTデータ経営研究所や北川村、国、大学、通信会社など11の機関が合同で行っています。22日に開かれた視察会には事業に関わる国や県、北川村、大学などから60人余りが参加しました。
参加者が向かったのは、年間130トンのゆずを出荷している「土佐北川農園」。広さ2.4ヘクタールほどあるこちらの園地の片隅には、ローカル5Gの基地局が立っています。
農園では、3年ほど前から、先進技術を活用したスマート農業の導入に取り組んできました。しかし、農薬散布や草刈りといった作業はまだ人の手で行っていて、大きな負担だったといいます。
(土佐北川農園 田所正弥 代表取締役)
「大変ですね。今の季節は涼しくてわりと大丈夫ですけど、それが7月8月になって気温がものすごく高いときで雨がっぱ。それとゴム手袋、長靴、マスクをしてやったら、体感温度としてはものすごく負担」
負担軽減のため、今回の実証事業で導入したのがこのロボット。モバイルムーバーと呼ばれています。専用のホースとノズルを装着し、園地を自動で走行させることで、農薬の散布を自動化しようとしています。
ロボットには4Kカメラがついていて、その高精細な映像をローカル5Gのネットワークを介して、数キロ離れた、ふもとの遠隔監視センターへ、ほぼ遅延なく送ることができます。遠隔での操作も可能です。
先月行われたテストでは、農薬散布にかかる作業時間を10aあたり82%軽減することができました。今後、テストを重ねて、走行の精度を高めるとともに、草刈機のアタッチメントをつけ、草刈り作業についても検証を行いたいといいます。
(土佐北川農園 田所正弥 代表取締役)
「大型の機械はご覧の通り。木は密集しているし、なかなか使いにくい。やはりコンパクトな機械で使用したら、それがもし(園地の)半分でも使用できるものなら、作業員の労働が半分で済みますのでね」
こうした技術の導入による、生産者の負担の軽減が、担い手不足の解消につながればと田所さんは期待しています。
(土佐北川農園 田所正弥 代表取締役)
「自分がこの年齢になった時に10年前はできたものが今、ものすごくしんどくて、はっきり言ってできない。それでどうしても若い力が必要になってくるけど、今の現状ではなかなか若い人が集まらない。そういう時には少しでも機械化ができて手助けしてくれるものなら、もうそれにこしたことはない」
ほかにも、ローカル5Gのネットワークを使って、新規就農者が遠くにいるベテラン農家から農業指導を受けられる「遠隔指導システム」の実験も行われました。今後も、ローカル5Gを活用した様々な実験を積み重ね、中山間地域の農業の課題解決につなげたいとしています。
(NTTデータ経営研究所 小島卓弥さん)
「今、まさに実証実験という形でやらせていただいているがそれが実用化できる、それから特定の農家だけでなく、いろんな農家で順繰りに使っていただく形で、要は1台のモバイルムーバーが色々なところで使われるような形でコストパフォーマンス高めていきたい。高知県の中ではユズは広く栽培しておられると思いますし、高齢の方がふえてきているかなと思うので、できるだけ農業の省力化のようなことが実現できるといいのかなと考えております」














