1966年、静岡県旧清水市で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」。死刑が確定している袴田巖さんの再審=裁判のやり直しの可否が3月13日に決まります。袴田さんの弁護団は「今回は再審開始に間違いない」と自信をのぞかせます。その理由を深掘りしました。
<袴田事件弁護団 西嶋勝彦弁護士>
「結論は(2018年の)大島決定を取り消して、『最高裁の宿題』に応えた開始決定になるだろうと思います。それ以外には考えられない」
今回は、再審開始に間違いない。そう語った袴田巖さんの弁護団。
1966年、旧清水市のみそ製造工場で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」。逮捕された袴田巖さんは1980年、死刑が確定します。犯行時に袴田さんが着ていたとされる通称「5点の衣類」が裁判が始まった後に見つかるなど、不可解な事が多く、冤罪事件を疑う弁護団の規模も日を追うごとに大きくなりました。
「再審開始です」
2014年、静岡地裁が再審の開始を認め、48年ぶりに袴田さんを釈放。釈放から9年が経ちますが、検察が即時抗告したため、審理はまだ続き、その身分は、いまだ死刑囚です。東京高裁が再審の可否を決める3月13日。弁護団は裁判所の“2つの動き”を根拠に再審開始決定に自信をみせます。
1つ目は「裁判長自らの視察」です。2022年11月、静岡地検を訪れたのは、東京高裁の大善文男裁判長ら。再審の可否を判断する裁判長自ら犯行時に袴田さんが着ていたとされる「5点の衣類」をめぐる実験を静岡地検に出向き、視察しました。
<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>
「だいたい、高裁の裁判官が静岡に直接来て、こういう実験の結果をその目で見てみようというね、そういうことが非常に異例なことです」
裁判官として、30件以上の無罪判決を確定させ、映画やドラマのモデルにもなったといわれる木谷明さん。元裁判官は「裁判長自らの視察」について。
<元東京高裁判事 木谷明弁護士>
「直接見て確かめたいという裁判官の熱意の表れじゃないですか。裁判官が熱意を持っているのは間違いありません。裁判官がどの程度、熱意を持っているかによって、再審の帰趨(=行き先)は分かれることが多い。本当に熱意のない裁判所は何もしませんからね」
木谷さんは、大善裁判長らに熱意があるのは間違いなく、弁護団の見立ては大きく間違っていないのではと話しました。
そして、2つ目の根拠が「裁判長と袴田さんとの面会」です。2022年12月、大善裁判長らは東京高裁で袴田さんと面会。現在の袴田さんの状態などを聞き取りしたといいます。
<袴田巖さんの姉秀子さん>
「裁判長さんは『私は裁判官のなんとかです』と自己紹介をして『巖さん、巖さん』と声をかけていただいた」
ここ10年ほどの審理を担当した裁判長の動きをみると、再審開始の決定を出した静岡地裁の裁判長は袴田さんとの面会を望んだものの、本人が拒否。一方、再審開始決定を取り消した東京高裁の裁判長は、袴田さんへの面会を望みませんでした。
<元東京高裁判事 木谷明弁護士>
「裁判なんですからね、本人から直接声を聞きたいというのは、裁判官としては当然思うはずです。袴田さんがどういう状態でいるのかを知った上で裁判をしたいという気持ちだと思います。今度の差し戻し後の審理の経過を見ていても。これで原決定(=再審開始決定)を取り消すとは私には思えません」
それでは、検察のOBはどう見るのか?東京地検特捜部副部長を務めた若狭勝さんは。
<元検察官 若狭勝弁護士>
「再審開始決定を維持する可能性が結構出てきたんじゃないかという見方をしています。ただ、検察としては弁護人が思っているほどには思っていない可能性もある」
東京高検は、これら一連の東京高裁の対応をどう見るか、という質問に対して、「審理中の再審請求事件の具体的な内容に関わる事柄でもあるので、お答えすることは差し控えます」とコメントしています。
再審の可否は3月13日に決定が示されます。
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