性的少数者への理解を促す「LGBT理解増進法案」。岸田総理が準備を進める中、「待った」の声があがっています。声をあげたのはLGBTの当事者たちで、“理解増進”ではなく、“差別禁止”を盛り込んだ法整備を訴えました。

「君を女性として見ることはできない」執拗な嫌がらせで休職に…

トランスジェンダー女性のAさん。上司から数か月間にわたって執拗な嫌がらせを受けました。

トランスジェンダー Aさん「私のことを他の人に紹介するときに『◯◯さんです』て言えばいいところを『◯◯君です』とわざと言ってくる。会議があるたびに『◯◯君』て呼び名を変えなかった」

会社で「性自認が女性」であることを公表していたAさん。上司に呼び方を変えて欲しいと繰り返しお願いしましたが・・・

会社の上司(50代)「君を女性と見ることはできないよ。女として扱ってほしいなら、さっさと手術でもなんでも受ければいいだろう」

トランスジェンダー Aさん「じきに直してくれるだろうと希望があった。直してくれないと分かると、それは絶望に変わっていく」

――最終的に心はどうなりましたか?

トランスジェンダー Aさん「完全に壊れちゃいました。起きて玄関出ても突然涙が出てきたりとか」

不必要に業務から外されることもあり、Aさんはうつ病を発症。職場の改善も見られず、3年半以上にわたり休職を余儀なくされましたが、その後、労災認定されました。

トランスジェンダー Aさん「少なくとも欧米レベルの、差別をしちゃいけませんよという考え方をみんなで共有できるような、そんな社会になってほしい」

相次ぐ公人の差別発言 LGBT法案の行方は?

一方で、公職につく人たちのLGBT=性的マイノリティに対する差別発言が後を絶ちません。

2月4日、総理秘書官を更迭になった荒井勝喜氏。「見るのも嫌だ。隣に住んでいると思っても嫌だ」などと発言していました。

静岡県内でパートナーシップ宣誓制度を初めて導入した浜松市でも・・・

静岡・浜松市議会 柳川樹一郎市議(72)「申し訳ありませんでした」

謝罪したのは、市議会の議長を3回務めた自民党の重鎮市議。男性が暮らすアパートに侵入した疑いで逮捕された男について「異常な性癖」と発言したのです。

柳川樹一郎市議(72)「72歳になったところですが、まぁ長い間の潜在意識というか、LGBTQというようなことが時代の中にない時の思い」

こうした中、岸田総理の指示のもと動き出したのが「LGBT理解増進法案」です。2021年、超党派の議員連盟の合意で成立した法案ですが、国会提出は見送られていました。

ネックになったのが条文のこの一言。

「差別は許されないものである」

この表現に自民党の保守派の一部が反発したのです。2月13日、法案の行方について問われた茂木幹事長は・・・

自民党 茂木敏充幹事長「性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならない。引き続き文言を含めて与野党での調整を進めてもらいたい」

「差別」の前に「不当な」と付け加え、「許されない」は「あってはならない」と、よりマイルドな言い回しに。

これは慎重派の中心的存在だった、安倍元総理の国会答弁と同じ表現です。与党関係者は・・・

与党関係者「落としどころとして『差別は許さない』を安倍さんの答弁に直して成立させるんだろう」

こうした現状を当事者たちはどう思っているのか。2月14日、国会内で開かれたLGBTQ+の人たちの集会。主催者の1人、松岡宗嗣さんが訴えたのは「差別禁止法」の必要性でした。

一般社団法人fair 松岡宗嗣代表理事理解増進なんてあまりにも生ぬるいです。作るのであれば差別禁止法でしょう」