◆「忙しい」点検拒む店舗も、迫る指導員の“時間切れ”

北九州市消防局によると、調査すべき飲食店の9割は1回目の点検を終えた。残る1割は店側に「忙しい」などと拒まれている。そもそも店主と連絡がとれない店もあるという。
防火指導員「よその区の調査員とも情報交換しますが何件か電話がつながらない。店に固定電話がなく、携帯電話は不動産会社も教えてくれないので、連絡のとりようがないんです」

防火指導員とともに北九州市が新たに設置したのが、大学教授や市場関係者で構成される検討会だ。その中では、任期が2023年3月までの「防火指導員」制度を4月以降も継続すべきだという意見が出ている。検討会のメンバーの1人は話す。

東京理科大学総合研究院火災科学研究所・小林恭一教授「市場はこれからもどんどん危険になってくる。古くなったり空き家が増えたり火災の危険度があがってくる。それなのに防火指導員が今年度末で終わってしまうのは考えられない」
◆短期間で2度の大火、3度目を防ぐには

検討会では、増える空き店舗の防火対策についても議論が交わされている。去年10月に同じ北九州市の商店街(八幡東区)で、空き店舗の電気系統トラブルが原因とみられる火災が起きたためだ。人口減少と高齢化に伴い、活気のあった北九州市内の市場は様変わりした。管理の行き届かない空き店舗も少なくない。これまでに「漏電ブレーカーの設置」「退居の際にブレーカーを切る」「所有者による点検」などが検討されてきた。先出の小林教授は「空き家を放置しない街づくり」に変えていくべきだと考えている。

小林恭一教授「空き家は電気がいらないのであればブレーカーを切っておく。空き家が増えて今の木造市場がすべて空き家になることがいずれ起きるかもしれない。それをどうするかは街づくりとして考えるべきです。簡単にはできないと思いますが、市の都市計画の範疇だと思います」

検討会での議論を受け、北九州市消防局は「できるものから着実に進めたい」とコメントしている。4月以降の方針はまだ決まっていいない。もう二度と繰り返すまいと叫ばれた大火は2度起きた。3度目を防ぐカギは、店舗側の「防火意識」と行政の「長期的な視野を持った対策」が握っている。














