九州電力が子会社の送配電会社が管理する端末を使って競合する新電力の顧客情報を不正に閲覧していた問題です。わずか3か月で約1万4000件に上った不正閲覧。新電力と大手電力の公正な競争を揺るがす事態はなぜ起きたのでしょうか。
◆3か月間で1万4000件近く……陳謝
九州電力の会見「今回の事態を、大変重く受け止めています。皆様には深くお詫びを申し上げます。申し訳ございません」
九州電力の社員が、子会社の「九州電力送配電」が管理する端末を利用し、競合先である新電力の顧客情報を不正に閲覧していた問題。九州電力によると、調査をした2022年10月からの3か月間だけで不正閲覧は1万3960件。379台の端末が使用されていました。
◆「閲覧」が法律で禁止されたワケとは?
そもそもなぜ、親会社の九州電力が、子会社の「九州電力送配電」が管理する顧客情報を閲覧してはいけないのでしょうか。電力自由化の制度設計に詳しい、兵庫県立大学政策科学研究所の草薙真一所長は――。
兵庫県立大学政策科学研究所 草薙真一所長「競争によって様々な顧客サービスが生まれてくるだろう、顧客が喜ぶだろう、と考えられたわけです。新規参入者は送配電網を持っていないために、旧一般電気事業者が持っている送配電網を使わせてもらう“託送”制度を利用して、客に電気を売ることになりました」
◆閲覧が不公平になる仕組み
国は2016年までに電力小売りを段階的に自由化。新たな電力会社が参入できるようになりました。基盤が弱い新たな電力会社と大手電力会社の間の公正な競争を担保するために、送配電部門を分社化する「発送電分離」が行われたのです。この「発送電分離」にあわせ、災害時対応など特別な場合を除いて、大手電力会社が送配電子会社の顧客情報を共有することが法律で禁じられました。
兵庫県立大学政策科学研究所 草薙真一所長「(送配電事業者は)どの新規参入者がどのお客様を自分の所から奪おうとしているのか、知ることができる立場です。(閲覧できてしまうと)完全に競争相手の手の内が分かる競争をしていることになりますので、強力な集中力を発揮してあまりにも不公平です」
◆使い慣れた子会社の端末をそのまま利用
禁止されていた閲覧が、なぜ行われてしまったのでしょうか。九州電力によると、2020年1月に分社化に向けて導入した新しいシステムに不具合が発生。急きょ「九州電力送配電」が顧客情報を閲覧できる端末を、九州電力に貸し出しました。九州電力は、貸し出された端末をシステムの不具合が解消した後も返却せずに使い続けていたということです。
九州電力の会見「業務運営上効率化を図っていきたいというニーズが、今まで使っていたシステム、使い慣れたものですので、どうしてもそちら側を優先したと。常日ごろから使っていたということになるかと思っております」
◆コンプライアンス徹底へ
九州電力は従業員に対するアンケート調査を実施。その結果、新電力からの切り替えを促す営業活動への活用は確認されなかったとしていますが、不公平な状況が長期間続いていた事実は変わりません。九州電力は今後、外部の有識者も含めたコンプライアンス委員会による徹底的な原因究明を行うとともに、研修などを実施して再発防止に取り組むことにしています。
兵庫県立大学政策科学研究所 草薙真一所長「電力会社が真摯に受け止めて、説明責任をしっかりと果たしていき、信頼を取り戻すことに努めていただきたいと思います」
◆カルテルで課徴金も…
九州電力をめぐっては、他の大手電力と互いのエリアで営業しないよう申し合わせる「カルテル」を結んでいたとして、公正取引委員会から課徴金の納付を命じられたばかりです。私たちの生活を支える会社だけに厳格な法令順守が求められています。
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