中国の不動産不況が始まって5年が経過し、住宅市場にようやく買い手が戻り始めている。ただ、デベロッパーにとっての誤算は、新築のマンションではなく、小さな中古住宅が人気を集めていることだ。

1970-80年代に旧ソ連を手本とした住宅建設ブームの時期に建設された集合住宅が、中国の大都市で買われている。こうした住宅は「老破小」と呼ばれ、その名の通り、老朽化し、狭い物件を指す。断熱性能が低く、配管設備も旧式であることが多い。

それでも購入者がこうした欠点を受け入れているのは、多くの物件が教育水準の高い学校や公共交通機関、生活に便利な施設が充実した人気エリアに立地しているためだ。そのため、一部都市では小型住宅の価格が上昇している。

上海の「老破小」

不動産調査会社プロップテック・イノベーションズによると、上海では70平方メートル未満のマンションの平均価格が昨年11月の底値から今年4月末までに2.4%上昇し、住宅市場の全国的な下落傾向に逆行した。

ウォール街では中国不動産市場への楽観論が強まっている。しかし、築古の小型住宅への需要集中は、市場全体の本格回復にはなお長い時間が必要であることを示している。

一方で、国民が不動産投機に走るのではなく、消費や投資により多くの資金を振り向けるよう促す中国政府の方針に沿ったトレンドにもなっている。

上海で築40年のマンションを所有するジェイソン・ルーさん(44)は窓に鉄格子が付いた住宅について、「最初は刑務所の独房に住んでいるような気分になるかもしれない」と話す。

ルーさんは3月、32平方メートルの物件を約29万ドル(約4700万円)で購入した。同じ団地内のより広い住戸にはその2倍以上を支払った。現在、小さい方の物件は賃貸に向けて改装中で、大きい方にはすでに入居者がいる。

ルーさんは入居希望者に周辺環境を見るよう勧めているという。物件から200メートル圏内には川沿いの景観やテニスコートがあり、ビジネス街の陸家嘴にもアクセスできる。さらに、この地域には地下鉄駅の建設も予定されている。

面積当たりの価格は決して安くない。2戸を合わせた単価は1平方フィート(約0.09平方メートル)当たり830ドル超と、米国勢調査局のデータに基づく全米の新築住宅平均価格の5倍近くに達する。

志向に変化

中国の不動産不況は長年にわたり経済の重しとなっており、約1300億ドルのデフォルト(債務不履行)を引き起こしたほか、中国恒大集団や碧桂園といったかつての大手デベロッパーの経営破綻につながった。

今年前半には売り圧力の緩和を示す兆候も見られたが、その勢いは長続きしなかった。5月に新築と中古の住宅価格下落が共に加速し、市場は伝統的に販売が低迷する時期に入ったとアナリストは警告している。

上海の老破小住宅に設置された鉄格子付きの窓

中国の不動産危機はスケールが大きく、アナリストはここ数年、市場回復を示す兆しを探し続けてきた。小型住宅への需要拡大は最新の明るい材料と見られているものの、データはこの回復が大都市に限られていることを示している。

上海では3月に中古住宅販売が4年ぶりの高水準となったが、取引の約半数は価格が200万元(約4800万円)未満の物件だった。

プロップテック・イノベーションズによると、北京市や深圳市、杭州市でも同じような傾向が見られる。浙江省の省都、杭州にはアリババグループやAI企業DeepSeek(ディープシーク)が本社を置いている。

1970-80年代の住宅建設ブームを経験していない地方都市の多くは、こうした住宅市況回復の恩恵を受けていない。

ブルームバーグが集計したデータによれば、5月の中古住宅価格は主要都市で前月比で約0.35%上昇した一方、いわゆる「二級」「三級」都市では2023年以降、一度もプラスとなっていない。

中原地産のデータによると、上海の中古住宅価格は昨年3月から12月までに約15%下落し、22年のピーク時と比べると3分の1余り低い水準にある。

中国の地方政府はこれまで不動産市場の立て直しに向けて複数の施策を打ち出してきたが、効果はまちまちだ。

チャイナ・インデックス・ホールディングスによれば、今年は80を超える地方政府が住宅「公積金」制度を活用した借入枠を拡大した。これは、銀行より低い金利で住宅購入資金を借りられる政府の積立制度だ。

また、上海や深圳などでは、それまで購入資格がなかった域外居住者にも住宅購入を認めるよう制度を緩和した。さらに中央政府は昨年末、所有期間が2年未満の住宅を売却する際の付加価値税(VAT)を引き下げた。

中国では長年、新築住宅への志向が強かったため、築古住宅への需要拡大は異例の現象と言える。そのため、売れ残った新築在庫の販売回復に期待をかける資金難のデベロッパーは、この部分的な市場回復の恩恵をほとんど受けられない状況となっている。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の中国デベロッパー株指数は今年に入り20%余り下落。代表的な本土株価指数であるCSI300指数は年初来で上昇している。

野村ホールディングスの中国担当チーフエコノミスト、陸挺氏は、大都市の一部で住宅市場の回復が始まりつつあるとしても、それだけでは景気低迷による全国的な痛みを和らげるには不十分だと指摘。「中国は依然として長期にわたる不動産不況の中にある」と5月のリポートでコメントした。

原題:China Demand for Soviet-Style Apartments Shows Limits to Revival(抜粋)

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