「無戸籍問題」の解消を目指した2022年の民法改正後も戸籍を得られていない人がいるとして、無戸籍の男子大学生が会見を開き、運転免許証やパスポートが取得できず、「みんなが当たり前にできていることができない」と胸の内を語りました。

民法の「嫡出推定制度」は、女性が離婚後300日以内に出産した子どもを元夫との子とみなすため、離婚直後に別の男性との子を授かった女性が出産届を出さないケースがあり、無戸籍の子が生じる原因として問題視されました。

こうした問題を解消するため、2022年に民法が改正され、施行日以降、離婚後300日以内であっても、母親の再婚後に生まれた子どもは再婚相手の子とみなされるようになりました。

また、施行日前に生まれた子どもについても、救済措置として、施行から1年間に限り、戸籍を得るための法的な手続きをとることが認められました。

しかし、救済措置の期限であった2025年3月末を過ぎても、なお無戸籍のまま取り残された人がいるとして、戸籍のない10代の男子大学生・せいやさん(仮名)と支援する弁護士グループが9日、都内で記者会見を開きました。

せいやさんの母親は、DVを受けていた夫から逃れるために別居していましたが、その期間中に別の男性との間にせいやさんを授かり、離婚成立後の300日以内に出産。しかし、この男性からも暴力を受けたため、再婚せずに避難しました。

救済措置であったはずの法的手続きも、暴力を受けた元夫などに居場所が伝わるなどのリスクがあり利用できず、せいやさんは今も無戸籍のままです。

せいやさんは会見で、無戸籍では運転免許証やパスポートが取得できず、友人から「免許を取ってドライブに行かないか」「短期留学に行かないか」などと誘われても、「理由を明かせず、ごまかして断らざるを得なかった」と明かしたうえで、「みんなが当たり前にできていることが、僕にはできない。そのとき初めて自分は周りと違うんだなと感じた。戸籍がないことを誰にも言えず、一番信用できる友達にもうそをつくのが苦しい」と言葉を詰まらせました。

記者会見に参加してメディアの前に出ることに不安があったものの、「自分のような人がこれ以上出てきてほしくない」と思い、会見に出ることを決めたと語りました。

法務省によると、無戸籍者の数は把握しているだけでも、今年5月10日時点で652人にのぼります。

「無戸籍問題を考える若手弁護士の会」代表の高取由弥子弁護士は、「制度が作られても安全に使えず、取り残された人がいる」と指摘し、市町村長の職権で、父親の記載がなくても安全に戸籍を作成するための制度運用や、無戸籍者の実態把握を求めました。