ベネチア国際映画祭で、審査員特別賞を受賞した注目の映画が、30日に始まるドキュメンタリーフェスティバルで特別上映されます。描かれているのは、迫害を受けるミャンマーのロヒンギャの人々。映画『ロストランド』の藤元明緒監督に、なぜ今、この映画をつくったのか、思いを聞きました。

「生きる場を奪われた人々がいる。故郷を奪われた難民の幼いきょうだいが、家族との再会を願い、命がけで国境を越えていく――」

この作品は、迫害を受けるミャンマーのイスラム系少数民族・ロヒンギャの人々の証言をもとに作られました。国籍を持たない姉弟が、人身売買の危機に直面しながらも、離ればなれの家族を求めて国境を越える姿を描いています。

イタリアのベネチア国際映画祭では、革新的な作品を集めた「オリゾンティ部門」の審査員特別賞に輝きました。

映画『ロストランド』 藤元明緒 監督
「ロヒンギャの人たちがものすごく喜んでくれたと言いますか、映画が届いたということはもちろんそうなんですけども、そもそもその『ロヒンギャ』という名前自体が(表に)出たということにものすごく喜んでいました。みんなが嬉しそうで、つくってよかったなと」

2021年にミャンマーで起きた軍事クーデター。民主化への道が閉ざされたことで、ロヒンギャ難民の本国帰還は、ほぼ絶望的となりました。

藤元監督は、このとき味わった「ある罪悪感」が制作のきっかけになったと話します。

映画『ロストランド』藤元明緒 監督
「(クーデター後に)色んな思いで自分が支援活動を始めていく中で、振り返ってみると『なぜロヒンギャのときは声を上げなかったのか』と。自分自身ミャンマーと深く関わる上で、仕事であったり友人関係、様々ある中で、ある種、自粛をしてしまったといいますか、沈黙をしてしまった。その負い目というのが、この10年以上ずっと積もり続けてきて、今回の『ロストランド』の企画に繋がっていったという形ですね」

長年、差別と排除の対象とされ、国外へ逃れた難民は100万人以上。過酷な避難生活が長期化する中、国際社会からは「忘れられつつある」のが現状です。

映画『ロストランド』 藤元明緒 監督
「ロヒンギャの人たちというのは、ずっと『いない』とされてきたんですよね。歴史上、ミャンマーにおいては『ロヒンギャ』と名乗ること自体も認められていない。でもやっぱり、映画を通して彼らの眼差しであったり、心に触れて、彼らの存在を可視化していくと言いますか。そういったことが、一番この映画でやりたかったことです」

作品には、主演の姉弟を含め、200人を超えるロヒンギャの人々が実際に出演し、自らの実体験を演じています。

「彼らの存在を知ってほしい」。監督の思いは、ここ富山での「ある支援」にも重なります。

富山ムスリムセンターでは、高岡市に住むシリア出身の男性が、ロヒンギャの子どもたちのために学校を開いています。

富山でも、温かい手を差し伸べる活動が続けられているのです。だからこそ監督は、富山の人たちにこの映画を届けたいと考えています。

映画『ロストランド』 藤元明緒 監督
「多くの人に見てもらえるということが、結果的に彼らの存在を浮かび上がらせることに繋がっていくと思うので。はい、富山県でもぜひ、皆さん見に来てほしいなと思います」

映画『ロストランド』をはじめ、ドキュメンタリー映画の話題作やチューリップテレビが制作した映画や番組を上映する「ドキュメンタリーフェスティバル」が30日と31日、JMAX THEATERとやまで開かれます。

藤元監督のトークセッションは31日の12時30分から。そのあと14時40分から映画の上映が予定されています。