「豊平区羊ヶ丘」「三角山~藻岩山周辺」なぜこの2カ所なのか
第1回・第2回の記事で解説したとおり、キーワードは「DNA」と「定着しているメス」です。
札幌市では出没現場の調査や、山の中に設置した「ヘアトラップ」(木に体をこすりつけるクマの習性を利用して、クマの毛を採取するもの)を通して、クマのDNAを収集しています。
そのデータ分析から、三角山~藻岩山周辺と豊平区羊ヶ丘周辺に、定着しているメス/親子のクマがいることがわかっています。
ただ、EnVision環境保全事務所の中村秀次さんは、「すごく恐ろしいクマがいる、ということではない」といいます。
「基本的に、『クマ=危険』ではありません。出会ったら必ず急に襲ってくるような動物ではありません。豊平区で私たちが気にしているクマも、人に出会って向かってきたりする様子は今のところ確認されていません」
その上で、「怖いのは、『人を襲うとエサが手に入る』『人里に行くとエサが手に入る』とクマが学習してしまうことです。山際で生ゴミを放置したり、食べものの入ったカバンを置き去りにしたりすることは避けてほしいです」と話します。
豊平区羊ヶ丘周辺では、2025年にクマの出没情報が複数寄せられていますが、時間帯が夕方や朝方であったり、道路ではなく水路を利用して移動していたりと、まだ人目を避けている様子が感じられます。作物を育てている畑もありますが、電気柵など対策をしていることもあり、被害は確認されていません。
ただ、「気にしている」理由は、人の生活エリアに近づきすぎていることです。
人が働く事務所の近くや、バス停の近くなどで目撃されていて、国道36号線に近づいてきています。
それが単発ではなく、継続的に出没情報が寄せられているため、「定着されるのは見過ごせない」と気にかけています。
このエリアは、10年ほど前までは定着しているメスのクマはまったくいなかったといいます。ただ、山から緑がつながっていて、ときどきオスのクマが移動で使っているルートであることはわかっていました。
分布が拡大するにつれ、そうした場所にも定着するメスがでてきてしまっています。
⑤三角山~藻岩山周辺
これまでの記事で解説しましたが、札幌市ではメスのクマの対策に着目しています。地道なデータの蓄積によって、どのエリアに対策すべきクマがいるかを割り出しています。
その結果、複数のメスのクマが定着していることがわかっていて、かつ人が観光などで利用する頻度の高い、三角山から藻岩山の周辺を「ヒグマ対策重点エリア」と位置づけました。
この地域では、2007年ごろはほとんどクマの出没情報がなく、出没確率は10%ほどだったものの、近年は30~40%に高まってきています。
このエリアでは、2025年10~11月にも、出没情報が相次ぎました。
円山動物園の園内や、北海道神宮の駐車場での目撃もありました。
10月には住宅地に出没したクマ1頭を、11月には円山動物園内に設置した箱わなで1頭を捕獲しています。
出没を繰り返していたクマが捕獲されると、通常、そのエリアでの出没はいったんは落ち着きますが、これまでの調査で、三角山~藻岩山周辺には、まだ少なくとも3頭のメスがいることがわかっています。
こちらも人に向かってくるような問題行動は見られていませんが、住宅地に繰り返し出没することのないよう、引き続き注意が求められます。














