きっかけは2年間の海外赴任 「母国のルーツに誇りを」

生まれ育った岡山市に醸造所を構え、来年(2027年)の秋をめどに独立を目指す井上さん。「Ryok」の開発は、夢を実現するための第一歩です。

(辻本店 井上翔太さん)
「一本自分で仕込んだことがあるという経験がないと、やっぱりこれから迷っていくだろうし、一本自分の基準になるようなお酒を造りたいなと思って」

そんな井上さん、昔から日本酒が好きだったわけではないといいます。きっかけは、2021年までの2年間を過ごしたマレーシアでの海外赴任経験でした。大学時代に勉強した英語力を活かそうと東南アジア各国にも拠点を持つ、東京の電子部品メーカーに就職した井上さん。インド系や中国系など文化や言語の異なる人々が共存する他民族国家での生活を経験したことで日本人として、「母国のルーツに誇りを持って暮らしたい」と考えるようになりました。

(辻本店 井上翔太さん)
「日本っていいものが無限にあるにも関わらず、自分たちがそれに気づいていないというのがすごく悲しい事だなと思って、日本の文化に携われるような仕事がしたいと」

その後、日本に帰国。当時、勤め先があった京都で、偶然飲んだ辻本店の酒に衝撃を受けました。

(辻本店 井上翔太さん)
「日本酒って重たくてアルコール感が強いと思っていたんですけれど、これはそんなことなくて、日本酒ってこんなバリエーションがあるんだと思いました」

故郷の岡山県で造られた日本酒であったことにも運命を感じたといいます。そして井上さんは本格的に酒造りを学ぼうと一念発起して転職。3年前に辻本店の門を叩きました。

(辻本店 井上翔太さん)
「営業とか企画とかを考えるのは得意だけれども、本当に汗を流して体を入れて、やってみないと本当に血の通ったお酒はできないんじゃないかなと思って、醸造部で働かせてほしいという話を最初にさせてもらいました」

酒造りを通じて、岡山が日本酒と関わりの深い地域であることにも気づかされました。それは、岡山がルーツの酒米「雄町」の存在です。約160年前、現在の岡山市中区雄町で発見された品種で流通量こそ少ないものの、濃厚な旨味を持ち、ほかにはない味わいに仕上がることから「幻の酒米」といわれています。岡山は全国の生産量の9割以上を占める最大の産地。しかし、県内での知名度はそれほど高くなく、井上さんもこうした事実を知らなかったといいます。

(辻本店 井上翔太さん)
「もっと知ったら、岡山の人がもうちょっと岡山を誇りに思えたり、岡山を好きになれたりするんじゃないかなと思います」