「救急車を呼んでほしい」。ゴールデンウィーク中の5月3日、富士山の九合目付近で滑落して救助を要請したのは、中国国籍の20代の男性でした。

冬季閉山期間中の富士山で無謀な登山による山岳遭難事故が相次いでいることを受け、富士宮ルートのある静岡県富士宮市の須藤秀忠市長は5月8日、静岡県の鈴木康友知事に要望書を提出しました。

須藤市長が訴えたのは、閉山期間中の登山を未然に防ぐための仕組みづくり。そして、閉山期間中に遭難して救助を受けた場合の"救助費用の自己負担"です。

須藤市長は要望書で、静岡県に対し2025年6月に閉山期間中の安全確保に関する要望を提出して対策の強化を求めてきたことに触れたうえで、「その後も外国人登山者等の軽装及び無謀な入山が後を絶たず、死亡事故が発生するなど危険な状況が継続している」と、事態の深刻さが増している現状を伝えました。

冬季の富士山における遭難者の救助活動については、「困難を極め救助隊員の二次遭難のリスクが看過できない水準に達している」としたうえで、「救助隊員は市長にとって大切な職員の一員であり、救助隊員を失うようなことがあれば救助活動は何のためにあるのかと誠に無念な心持ちになる」と、救助にあたる隊員のリスクに言及しています。

市民の安全な暮らしを守り、世界遺産富士山の秩序を維持するために実効性のある施策を講じるようにと、須藤市長の切なる願いが知事に伝えられました。

【静岡県知事への要望書】(以下、原文ママ)

(1)閉山期間中の登山を未然に防ぐための仕組みについて

安全登山の観点から、閉山期間中の登山を制限するための実効性のある仕組みづくりを要望します。特に、多言語での案内不足を背景とした外国人登山者の無謀な入山が後を絶ちません。

登山道である県道の冬季通行制限の更なる徹底とともに、物理的な封鎖や、言語を問わず「危険・通行不可」と認識できる警告表示の設置等をお願いします。また、ルールを守らず入山した者に対する厳正な対処について引き続き検討していただくよう要望します。

(2)遭難救助に係るルールづくりについて

閉山期間中の山岳遭難において、静岡県消防防災航空隊(静岡県防災ヘリコプター)による救助を受けた場合には、埼玉県等の事例に倣い、一定割合の自己負担を生じさせる手数料徴収などの制度を早期に検討していただくよう要望します。

外国人遭難者においては、言語の壁により意思疎通が困難なことから、正確な状況把握に時間を要し、救助活動が長期化・複雑化する傾向にあります。これは救助隊員を過酷な環境に長時間晒し、二次遭難のリスクを増大させる危険な状況です。本制度の導入は、無謀な登山に対する抑止効果となり、救助隊員の安全確保にも直結するものと考えます。

あわせて閉山期間中の山岳遭難救助に係る費用の自己負担について、消防組織法等の関係法令の改正を国に働きかけていただくよう引き続き要望いたします。