祈りの言葉

本日、令和8年5月1日に、水俣病の公式確認から70年という大きな節目の日を迎えました。
水俣病で尊い命を失われた全てのみたまに対し、熊本県を代表し、謹んで哀悼の意を表します。
この70年の長い歳月のなかで、水俣病でかけがえのないご家族を亡くされた方々や、被害に遭われた方々は、言葉では言い尽くせない苦しみ、痛みと向き合い続けてこられました。
熊本県知事として、水俣病の被害拡大を防ぐことができなかった責任を重く真摯に受け止め、ここに深くお詫び申し上げます。
水俣病は、命の源である海を汚染し、多くの命と健康を奪っただけでなく、地域社会に深い分断をもたらしました。
公式確認から公害病と認定されるまで12年を要したその歴史は、初期対応の遅れがどれほど深刻な結果を招くかを私たちに深く問い続けております。
私は知事就任以来、県政のあらゆる場面でこの教訓を胸に刻み、現場に出向き、県民の皆様の声に耳を傾けながら、迅速で丁寧な対応を心がけてきました。
水俣病から学んだ初期対応の重要性、正しい情報に基づく判断、弱い立場にある方々に寄り添う姿勢。これらは私の政治の根幹であり、これからも揺らぐことはありません。
昨年、水俣病に関する誤った情報が相次いで発信されてしまったことは、極めて遺憾でございます。
偏見や差別は、被害者やそのご家族の方々の心を深く傷つけるだけでなく、地域の未来にも影を落としてまいります。
熊本県では現在、熊本県内全ての公立小学校の5年生が水俣市を訪れ、水俣病や環境問題について学ぶ「水俣に学ぶ肥後っ子教室」、また胎児性・小児性患者の方々や水俣病語り部の方々に小中高校などに訪れていただき、ご自身の経験や願いを伝えていただく取組を実施しております。
さらに今年度は、県内の市町村や民間企業を対象とする新たな研修を開始するとともに、啓発のためのシンポジウム等の開催や、地元民間団体などが主催する情報発信の支援などを実施することとしております。
また、国際水銀会議が開かれるインドにおいて、水俣病資料館語り部の方による講話も予定しております。
公式確認70年を契機とし、国、水俣市、関係者の皆様にご協力いただきながら、水俣病の教訓を国内外、そして次の世代へと確実に継承する1年といたしたいと思います。
胎児性・小児性患者の方々におかれましては、お生まれになった時から厳しい環境の状況にあっても、尊厳を保ち、時に新しいことにもチャレンジしながら日々を生き抜いてこられました。
私はそのお姿に触れるたび、水俣病行政を担う者として、そして1人の人間として、深い敬意を抱くとともに、心打たれる思いを強くしております。
胎児性・小児性患者の方々の、住み慣れた地域で暮らし続けたいという思いをしっかりと受け止め、その実現に向けてできる限りの支援をすることは、熊本県の責務でございます。
そのため県では、職員との顔の見える関係性をしっかりと築きながら、皆様のお声を丁寧にお聞きし、これまで福祉サービスの充実やグループホームの整備などを行ってまいりました。
それらに加えて、今年度からは遠方の医療機関への通院とされる患者の方が増えている実情を踏まえ、移動支援を拡充したところでございます。
また、水俣病関係団体の皆様からのご要望を受け、国に要望してまいりました、物価高騰を踏まえた療養手当の見直しについても、国にその要望を真摯に受け止めていただき、実現することができました。
今後とも、ご本人やご家族の思いをしっかりと受け止め、国、地元市町、関係者の方々と連携し、水俣病の被害者やご家族の皆様が、住み慣れた地域で安心して暮らしていただけるよう、きめ細かな支援を続けてまいります。
公健法に基づく認定審査について、申請者それぞれのご事情に丁寧に対応しながら、着実に進めてまいります。
併せて、地域の再生と振興についても、昨年7月に新たに策定しました第8次水俣・芦北地域振興計画に基づき、国、関係市町、地元関係者の皆様としっかりと連携し、魅力あるこの地域資源を最大限に活かしながら、人を呼び込み、地域の活力を創出する施策の推進に取り組んでまいります。
私は副知事時代から毎年この地を訪れ、慰霊碑の前で祈りを捧げてまいりました。
そして本日、知事として3度目の慰霊式を迎え、改めて県民の命と健康を守る責任の重さを胸に刻んでおります。
熊本県として、私が先頭に立ち、水俣病問題に真摯に向き合い、その解決に向けて全力を尽くしていくことをここにお誓い申し上げます。
結びにあたり、改めて水俣病犠牲者の方々のご冥福を心よりお祈り申し上げ、私の祈りの言葉といたします。
令和8年5月1日 熊本県知事 木村敬
<関連記事>
<式辞>水俣市 高岡利治市長
<祈りの言葉>患者・遺族代表 緒方正実さん
<祈りの言葉>石原宏高 環境大臣
<祈りの言葉>チッソ 山田敬三 社長
<祈りの言葉>児童・生徒代表 吉田泰さん













