「シリーズ現場から、」。きょうはある老夫婦とサクラの物語です。認知症の妻とその妻を介護する夫。ともに90代、静かに日々を過ごす2人が久々の花見に出かけました。サクラとともに感じる老い、そして生きることとは。

敏子さん
「サクラがきれい」
秀敏さん
「一刻千金です」

宗包秀敏さん(92)と敏子さん(91)。90歳を超えた夫婦です。

秀敏さん
「これから花見が何回できるか知らんけど、最後の花見かもわからんよ」

岡山県備前市。海と山に囲まれたのどかな地域に2人は暮らしていました。

結婚して68年。子どもが巣立ち、静かな日々を2人で送っていましたが、数年前、敏子さんは認知症に。妻を支えたい。不慣れだった家事や介護が、秀敏さんの日常になりました。

敏子さん
「何か食べたいわ、腹が減った。“そうめん”や“うどん”がええな」
秀敏さん
「そうめんか、ひやむぎか、きょうの晩はそれして食べるか」
敏子さん
「晩には“ごはん”が食べたいな」

支えあって、生きてきました。

秀敏さん
「せっかく夫婦になったんだから、長く一緒に生きたい」

おととしの春。久しぶりに近所のサクラを見に出かけました。

秀敏さん
「今、習いよる歌を歌ってあげるから」
「どうせ最後は散る身ならくよくよしている暇はない」

敏子さん
「もうずっと、死に場所へ行くだけ」
秀敏さん
「そこに2人で到達したいなと。ひとりだけ残ってもあかんわな。2人で。花も命も、咲いたら散る。きれいに咲いて散りたい」

去年、秀敏さんは病気で亡くなりました。2人の子どもたちは、認知症の敏子さんに夫の死を伝えないことを決めました。

冬が過ぎ、春が訪れ、あのサクラは今年も変わらず咲き誇っています。