消費、流通マーケティングの専門誌「日経MJ」が発表した2022年 ヒット商品番付には、今年ブームとなった商品やサービスがずらりと並んでいる。コロナの行動制限が緩和され、3年ぶりに消費の現場に活気が戻ってきた1年だった。日本経済新聞社の編集委員兼論説委員で「日経MJ」の元編集長、中村直文氏とともに2022年のヒット商品番付から見えてくる消費のトレンドを探る。
■リベンジ消費本格化。タイムパフォーマンスもキーワードに
西の横綱に選ばれたのは「#3年ぶり」。コロナで中止やオンライン開催だったイベントなどが3年ぶりに次々復活。入国制限の緩和で外国人の姿も戻り始めた。観光では、東京ディズニーシーのそばに4月にオープンした「トイ・ストーリーホテル」が開業以来ほぼ満室が続き大盛況だ。「サッカーワールドカップ日本代表」はドイツ、スペインと強豪国を撃破し、日本中を熱狂させた。Tシャツなど関連グッズが飛ぶように売れ、経済効果は約163億円という試算が出ている。漫画「ONE PIECE」の劇場版は国内歴代9位となる興行収入187億円を記録する大ヒットだった。
2022年、国内のEV市場を牽引したのが軽EVだ。日産自動車の軽EV「サクラ」は5月の発表以来、受注台数は3万台を超え、年間で最も優れた車を選ぶ日本カーオブザイヤーに43回の歴史で軽自動車として初めて選ばれた。人気ゲーム「ポケットモンスター」最新作は、発売3日で世界累計販売が1000万本を超え、任天堂のソフトとしては過去最高を記録した。
一時品切れが続いた「ヤクルト1000」は睡眠の質が向上するとしてビジネスパーソンを中心に支持を集め、1日あたり約181万本が売れた。サンスター文具が発売した「メタシル」は、金属を配合した芯で削る手間いらず、1本で普通の鉛筆30本分も書ける高コスパでヒットした。
22年はコストパフォーマンスならぬタイムパフォーマンス(タイパ)が消費のキーワードに。Z世代の7割が動画を早送りで見ているという調査結果もあり、倍速視聴が話題になった。大きく穴が開いたデザインで周囲の音を聞き取れるソニーのイヤホン「LinkBuds」は、会話しながら音楽を聴くなどタイパを求めるZ世代の「ながら聴き」に注目した ヒット商品だ。
ヒットの条件ともいえる「タイパ&コスパ」が東の横綱に選ばれた。2022年のヒット商品の傾向から、日本の消費トレンドについて考える。

――今年の横綱は「#3年ぶり」、「コスパ&タイパ」となった。

日本経済新聞社 編集委員兼論説委員 中村直文氏:
3年ぶりに行動制限がなくなり、旅行や買い物に人が出たわけですね。百貨店も秋以降はコロナ前を超えましたし、リベンジ消費が本格化してきたと言えるかと思います。一方では、物価が上がってしまったわけですから、コストパフォーマンス、節約志向も強まりました。