日本の春を象徴する桜。なかでもソメイヨシノは気象庁の生物季節観測の指標にもなっています。しかし、その生態は私たちが想像する「樹木」の常識を覆す、極めて特殊なものです。
江戸時代に生まれた「交雑種」

ソメイヨシノは自然界に元々存在した種ではありません。江戸時代末期から明治初期にかけて、江戸の染井村(現在の東京都豊島区駒込付近)の植木職人たちが、「エドヒガン」と「オオシマザクラ」を交配させて作ったものとされています。
すべては「たった1本のクローン」
ソメイヨシノの最大の特徴は、現在世界中に存在するすべての個体が、元を辿ればたった1本の原木に帰着する「クローン」であるという点です。全く同じ遺伝子(DNA)を持っているため、気温などの条件が揃うと同じタイミングで開花します。
ソメイヨシノは自らの花粉では受粉して種を作ることができない「自家不和合性」が非常に強く、種から増やすことができません。稀に他の品種(ヤマザクラ等)の花粉で種ができることがありますが、その種から育った木はもはや「ソメイヨシノ」ではなく、別の雑種になります。そのため、「接ぎ木(つぎき)」や「挿し木」といった栄養繁殖によってのみ増やされてきました。
ソメイヨシノの「寿命」と直面する危機
一般的にソメイヨシノの寿命は60年~80年程度と言われてきました。しかし、これは管理状態に依存する部分が大きく、適切な剪定や施肥を行えば100年を超える個体も存在しますが、戦後に大量植樹された個体が一斉に寿命を迎える「60年寿命説」が課題となっています。また、クローンであるため、特定の病害虫に対する耐性が全個体で等しく低く、感染症が広がると一気に壊滅するリスクを孕んでいます。
「サクランボ」は美味しいの?
ソメイヨシノにも稀に小さな黒い実がつきますが、食用として流通している「佐藤錦」などのセイヨウミザクラとは全く別物です。実は小さく、果肉がほとんどありません。また、強い酸味と苦味があるため、食用には適しません。














