東京スカイツリーの近くにある春慶寺。ここのお供え物はなぜかレトルト食品や調味料が多い。その背景には、日本に昔からあった「お寺」を通じたある思いがあった。

■「たよってうれしい、たよられてうれしい。」社会を目指して

お寺にお供えされたお菓子や日用品を経済的に困っているひとり親家庭に届ける。認定NPO法人「おてらおやつクラブ」は、お寺ならではの子どもの貧困問題と向き合う活動をしている。

具体的には、お寺で多く預かる“おそなえ”を、僧侶がおつとめをした後に仏さまからの“おさがり”として、支援団体を通じて様々な理由で困りごとを抱える全国のひとり親家庭に“おすそわけ”するのだ。

<支援の仕組み> 提供:おてらおやつクラブ

■「助けて」と言っていいんですよ 物を通じて“心”を届ける

そんなお寺の一つ、春慶寺(東京・墨田区)は、7年前からこの「おてらおやつクラブ」に参加している。説明会で話を聞き、無駄にしてしまうこともあった供物が役に立つ!と思ったそうだ。

それまではお寺に来た人に「おすそわけ」していたのだが、「おてらおやつクラブ」に参加したことで「今すぐ支援が必要な人」に広く届けられるようになった。新たに交流が始まった児童館や子ども食堂も増えた。

この活動に手を挙げたのには、こんな思いがあった。

春慶寺 齋藤幸子さん
「私が子どものころは、お腹を空かしていたらご近所が助けてくれました。今は誰にも頼れずに孤立してしまう人が多いんです。働いているのにお金がない、子どもに食べさせる物がない…こんな話を聞くと何かできないかと思って」

この日は段ボール3箱分を準備。幼児は誤飲する危険がある豆菓子は入れない、さきイカは小学校高学年なら食べるかな?などと想像して、お経を上げて供養した米やお菓子を箱詰めする。

齋藤幸子さんは手書きの手紙も同封している。そこには「『助けて』と言っていいんですよ、あなたを気にかけている人はたくさんいますよ」と書かれていた。

春慶寺 齋藤幸子さん
「日本人は『大丈夫?』って聞くと『大丈夫』って答えちゃうんですよ。本当はそんなことないのに。だから無理しないで頼ってほしいですね」


支援を受けた家庭から事務局経由で届くメールで知ったそうだが、誰かから荷物が届く経験が初めてという家族もいた。子どもたちは「本当に食べていいの?少しずつ食べなきゃね」と大切に食べてくれる。会ったこともないのに好きな物が届き、何で自分のことが分かるんだろう?と不思議がる子もいて、齋藤さんは人と人はどこかでつながっていると感じるそうだ。

春慶寺 齋藤幸子さん
「お供えした人も受け取る人もお互い誰だか分からないけれど、いろんな人の思いが込められているんですよね」

■供え物の定番“和菓子”だけでなくパスタや調味料の「おそなえ」も!?

土日の法事にお供えされるのは菓子や果物だが、ここ数年、納骨堂にお供えされる品に変化を感じるという。