福島県内で長く愛されてる老舗の今を伝える「老舗物語」。今回は160年以上前に鮮魚店としてスタートしたいわき市にある老舗を紹介します。時代とともに、加工品を中心に扱うお店へと変化。8代目が大切にしていることは「古さを競うのではなく、新しいことへの挑戦」です。

新鮮な魚介類を使った商品が多く並ぶ店内。いわき市平に本店を構える「丸市屋 四丁目店」です。

--志賀理泰さん(8代目)「海産物を扱う“魚屋”ですよね。目利きでこだわった原料、こだわった製法、こだわった販売。(魚に)付加価値をつけてより多くのお客様に喜んでいただけたら嬉しいなと、日々そんなことを考えています。」

そんな「丸市屋」の名物は、いわきの郷土料理としても知られる「うにの貝焼き」。新鮮なウニをホッキ貝の殻にぜいたくにのせて蒸した一品です。シンプルにご飯にのせ、醤油をたらして食べるのがおすすめ。ウニの濃厚な甘みと華やかな香りが口いっぱいに広がります。

こうした自慢の商品を受け継いだのが、志賀理泰さん。20年前、8代目に就任しました。

--志賀さん(8代目)「ちょうどその時、いわきはショッピングセンターの出店ブームだったんですね。父が『どれか1つやってみたらいいんじゃないか』と。ダイエーとエブリア。それが最初に手掛けた店舗でした。どういう風にやったらいいかが全く分からない。」

--番組スタッフ「とりあえずやってみようと?」

--志賀さん(8代目)「そうなんです。(父は)自分で考えてやれっていうんですよ。ディスプレイや他店との差別化が大変でした。」

常に攻めの姿勢で続いてきた「丸市屋」は1864年に「鮮魚店」として創業しました。その後、時代の変化にあわせて、加工から販売までを行うように。

--志賀さん(8代目)「父と母の時代に今のような加工品を(メインで)扱う商いに変わっていって、お土産用に利用するお客様が増えたので、加工品が定番になったのかなと思っております。」

そんな「丸市屋」自慢の加工品が、丁寧に仕上げた「干物」です。いわきの郷土食「さんまのみりん干し」も作っています。

--志賀さん(8代目)「従来のみりん干しは、薄くて硬かったんですよ。」

そこで、使用するさんまを変えたり、味を改良したりしたところ、肉厚でやわらかく、ひかえめな甘さの「みりん干し」に生まれ変わりました。

--志賀さん(8代目)「(干物の)概念を変えたい。チャレンジの成果がみりん干しになったのかな。」

さらに、魚を味噌漬や粕漬にした商品も。

--志賀さん(8代目)「味噌漬も粕漬も、くどくならないように心がけて作っています。」

魚本来の風味を活かすために、大吟醸の酒粕を使用。酒粕の香りを感じつつも、鮭の旨みを存分に楽しめます。

ほかにも、商品を作り上げる上でのこだわりが・・・

--志賀さん(8代目)「大量生産・大量販売はしない。心を込めて作ることが大切だとおもっているので、直営店だけの販売にこだわっています。」

そして、理泰さんは伝統を守りながら、挑戦することも忘れません。

--志賀さん(8代目)「バジル・レモン。(過去には)トマト、白湯とかいろんなチャレンジを今までやってきました。やっぱりそんなに簡単に新しいものはできないんですよね。だから毎日料理をするように、日々挑戦をして、その結果が新しい商品に繋がっていくのかなと。」

洋風シリーズの中でイチオシなのが、真鯛を「バジル漬け」にした商品。肉厚でふっくらとした真鯛を厳選して製造しています。オリーブオイルによって、真鯛がよりしっとりと仕上がるんです。

--志賀さん(8代目)「『和』とか『洋』とか垣根を超えた商品を売り場に出せればいいなと考えています。」

今年で161年目を迎える「丸市屋」。老舗という暖簾をかかげる上で大切にしてきた教えが。

--志賀さん(8代目)「老舗は『常に新しい』だと。新しいことに挑戦しろと。古さを競うんじゃなくて続けていくためにも、新しいことへの挑戦は大切なんだろうなと思っています。」

『ステップ』 
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2025年11月20日放送回より)