事実誤認――「遺棄」の故意の有無」
弁護側の論旨
弁護人は、グエット被告に「遺棄」の故意を認めることはできないと主張した。
具体的には以下の点を指摘した。
・グエット被告は、ごみ箱の蓋を開けたままにしており、交際相手の家のごみ箱内に入れるという行為によって男児の死体が外から視認できない状態が作出されることを認識していなかった
・他の生ごみ等の中に男児の死体を混入したものではなく、他の生ごみ等と一緒に男児の死体をごみ箱内に入れることになることを認識していなかった
・グエット被告は、第三者が男児の死体が入ったごみ袋をごみ捨て場に捨てるだろうとは認識していなかった
福岡高裁の判断
福岡高裁は、原判決の認定・判断は、論理則・経験則等に照らして不合理とはいえず、当裁判所においても是認することができるとした。
視認可能性と生ごみとの混入に関する認識については
「ごみ箱の大きさ、形状及びその内容物に加え、グエット被告自身が、中程までごみが入っていたごみ箱の中に男児の死体を置き、その上からケーキの紙箱を被せたことを踏まえると、グエット被告は、その行為によって外から男児の死体を視認できない状況が作出されることや、他の生ごみ等と一緒に男児の死体をごみ箱内に入れることになることを認識していたと認定した原判決の判断に誤りはない」
と認定した。
第三者によるごみ捨ての認識については、
「ごみ箱の中のごみについて、『自分がいないときは交際相手らが捨てに行くこともあった』旨の被告人の捜査段階の供述、『(燃えるごみを出すのは)大体私です』との原審証人(交際相手)の証言によれば、グエット被告に第三者が男児の死体を捨てるとの認識はなかったなどとはいえない」
と指摘した。
福岡高裁は、グエット被告の捜査段階の供述について
「グエット被告が出産後も医師等に対して頑なに出産の事実を秘し、虚偽の説明を繰り返していたことなどと整合する自然なものであって信用できる」
とした。
その一方でグエット被告の1審(福岡地裁)での供述については
「グエット被告の行為後の被告人の言動と整合しない上、その内容自体が一貫性のない不合理なものといわざるを得ず、信用できないとした原判決の判断に誤りはない」
と判示した。














