「紛失防止タグ」を悪用したストーカー被害が急増していることを受け、政府はきょう、改正ストーカー規制法案を閣議決定しました。今臨時国会で成立すれば、公布から20日後に施行されます。

鍵や財布などに取り付け、スマートフォンと連携して位置情報を把握する「紛失防止タグ」。GPSが人工衛星からの電波を使って正確な位置情報を特定するのに対し、タグが発信するBluetooth信号を周囲のスマートフォンが検知して、おおよその位置情報を特定しています。

2021年ごろから国内で流通し始めましたが、近年、紛失防止タグを悪用したストーカー事案が急増しています。

全国の相談件数は、2021年は3件でしたが、その後4年連続で増加し、去年は370件、今年はすでにそれを上回ったということです。

具体的な事例として、離婚調停中で避難している妻と子どもとの面会の際に、紛失防止タグを入れたぬいぐるみを子どもに渡したケースが報告されたということです。また、2022年5月には、滋賀県内で被害者の車に紛失防止タグを取り付け、自分が運転する車で追いかけて衝突させた事件も起きています。

こうした被害の増加に歯止めをかけるため、政府はきょう、紛失防止タグを悪用したストーカー対策などを盛り込んだ、「改正ストーカー規制法案」を閣議決定しました。

2021年の法改正で「GPS機器での位置情報の無断取得」は規制対象となった一方で、「紛失防止タグ」は現行法では規制の対象になっていません。

今回の改正案では、相手の承諾を得ずに紛失防止タグを取り付け、位置情報を取得する行為が規制対象に追加されました。このほか、被害者からの申し出がなくても警察の職権で加害者に対して、行政指導の「警告」ができることも盛り込まれました。

警察庁は、タイミングを逃すことなく速やかに警告を出すことにより、ストーカー被害が重大事件に発展しないよう効果を高めたい考えです。

今臨時国会で成立すれば、公布から20日後に施行されます。