様々なものが値上がりする中、酪農業界を苦しめているのが「家畜の飼料高騰」です。「この窮状の助けになれば」と立ち上がったのが、岡山県浅口市の高校生です。地域のある特産品の、廃棄される部分を飼料に活用しようとしています。

(酪農家)
「これはアメリカ産の乾燥飼料です。こういうやつも、すごく値上がりしてます」


飼料価格は、2年前に比べると2倍ほどに跳ね上がったといいます。およそ40頭の乳牛を飼育する、倉敷市の牧場です。円安やウクライナ情勢などによる値上がりが、経営を圧迫します。

(三宅牧場 三宅安史さん)
「なかなか価格転嫁をするというのは、やっぱり消費者の方のことも考えるとできないというのもあるので、そこが大変厳しいですね」


日本の酪農を衰退させかねない、かつてない危機に立ち上がったのが、おかやま山陽高校2年の「地域研究班」12人。解決のカギとして生徒たちが目をつけたのが、「地域の特産品」です。

(おかやま山陽高校 馬谷美好さん)
「ここが食べられない『非可食』の部分でして、私たちはここを活用できないかなと考えて飼料にしたという」


隣の里庄町で生産される「マコモ」です。イネ科の多年草で、根元にできる茎の肥大した部分は「マコモタケ」として出荷されます。

食物繊維が豊富で、和洋中どんな料理にもあう食材として人気です。

(おかやま山陽高校 池上大耀さん)
「茎葉の部分が、現状廃棄されている『非可食部』の活用について調べたところ、白鳥のエサとして他県で使われているという事例があったので、もしかしたら『牛の飼料にできるのではないか』と」


飼料は「裁断した茎や葉」を発酵させてつくります。地元の酪農家などの協力を得て試作を重ね、ようやく完成させました。

「けっこう重たいですね。一人で持とうとすると力がいるような」


これがマコモのサイレージ(家畜用飼料)です。その成分を分析した結果、「タンパク質を多く含む」など、栄養価が高いこともわかりました。さらに無農薬栽培なので安心・安全な飼料です。

(三宅牧場 三宅安史さん)
「いろんな方が、そういうことを考えていただけるというのは、大変ありがたいです。使えるものなら使っていきたいとは思います」
生徒の熱意は全国に広がろうとしています。

「農家と酪農家の課題を同時に解決します」

「プレゼンは上半身も使って、『一つめは』と説明するところを、手だけじゃなくって」

来年1月に東京で開かれる「高校生ビジネスプラン・グランプリ」のファイナリスト10組に選ばれました。耕作放棄地の活用など、持続可能な循環型の地域農業を訴えます。

(おかやま山陽高校 池上大耀さん)
「マコモタケは栽培がすごく簡単なので、耕作放棄地でも育てることができる。耕作放棄地による鳥獣被害といいますか、そういうのも改善できると考えています」

(おかやま山陽高校 園田智也さん)
「私たちはこのマコモタケのプランを2年間がんばってきたんですけど、酪農家の方であったり、畜産研究所の方々が協力して下さったので、その期待にこたえられるように、最終審査会で本領を発揮したいと思っています」


人の背丈以上に成長するのが特徴のマコモ。SDGsにもつながる高校生発案の飼料が、救世主としてぐんぐんと伸びていくかもしれません。