32歳で他界した村上原野さんに捧ぐ音
野焼きの炎に呼応するように縄文の音が響き渡ります。演奏は、5年前に他界した猪風来さんの息子、村上原野さん【画像⑧】に捧げられたものです。

(打楽器奏者 土取利行さん)
「見た?彼の作品。あれ【画像⑨】見た瞬間(捧げようと)決めた。それだけです。詳しくは解説しません。見たら分かります。それを解説したら消えます。彼のよさが」

「父を超えたい」と猪風来さんに弟子入りし、縄文の造形を学ぶこと10年。原野さんは、天性の才能を開花させ、独創的な作品を次々と生み出していきました。
猪風来さんも後継者として大きな期待をよせていましたが、「渦巻く翅(つばさ)のヴィーナス」【画像⑩】の制作中、くも膜下出血で倒れ、32歳の若さで亡くなりました。

「彼の方から村上原野を偲ぶ演奏をやりたいライブをやりたいという申し出がありましてですね、この上なく嬉しく思いました」
美術館に展示されている原野さんの作品は、主亡き今も見る人を魅了しています。後継者を失った美術館の行く末を案ずるのは、追悼の音色を届けた土取さんです。
「猪風来さんの作品、原野君の作品このままどうするんだってことなんですよ。僕のライブはきょうで終わりです。音はすぐ消えるんですよ。でも縄文土器とかマテリアルは滅びる時間はながいけど。音と違ってね。でも、それをつないで残していかなきゃならないし…」
「縄文の灯を絶やさないでほしい」猪風来さんに託された思いです。
(縄文造形家 猪風来さん)
「新しい美の創造、そして新しい音の美しい創造というものが同時にですね、みなさんの元に届けられた。これは縄文がもう一段ですね総合芸術として蘇っていく大きなきっかけになるんじゃないかなという風に思います」
縄文時代の芸術や文化を伝え続けて20年。亡き息子の思いとともにさらなる歩みを続けていきます。
