浜松市にあるファッションアイテムや雑貨などを販売するお店です。
おしゃれで個性的な品物が並ぶ中、何やら、かわいらしい人形がいます。

<イワクラタナカ 岩倉有輝さん>
Qこれは?
「遠州の縁起物てんぐちゃん。ひとつひとつ手作りされた張り子です」
今回のしずおか産、その名も「てんぐちゃん」
浜松で古くから伝わる郷土玩具「張り子」人形です。

真っ赤な体に、くりくりとしたまん丸の目、てんぐの象徴・長い鼻は…横についているのが特徴的です。
<張り子作家 坂田吉祥さん>
「他の作品、ブランドも手仕事のモノが多いので馴染むというか」
張り子作家の坂田吉祥さん36歳、「てんぐちゃん」の生みの親です。


路地裏を通り抜けると現れたのが坂田さんの自宅兼アトリエ。軒先には、何やら天日干しされています。

こちらの正体はのちほど…
どうやって、「てんぐちゃん」を作っているかというと…
<坂田さん>
Q今は何をしている?
「天狗の張り子の型を作っている」
Q型をパソコン上で?
「昔は粘土や木で作っていたが、私は3Dプリンターで3DCGで造形したものを型として出力している」

「張り子」と聞くとすべて手作り!というイメージですが…
「てんぐちゃん」は、何とも今風なんです。
<坂田さん>
「ここまではデジタルの力を使ってやっているが、ここからは従来通りというか」
張り子のベースとなる厚さの異なる和紙を手でちぎっては、何層にも重ねていきます。
<坂田さん>
Qデザイン、成形まではデジダルだがここからは?
「アナログ作業。紙を何枚も重ねることで凹凸感が出たりとか、揺らぎのある張り子らしさはなくならない」
型を抜き…ここで登場するのが胡粉。
繰り返し塗ることで真っ白に。

これが軒先で干していたものの正体です。
仕上げにアクリル絵の具で色づけたら「てんぐちゃん」の完成です。
以前は、京都でウェブデザイナーとして活躍していた坂田さん。張り子の出会いは意外なものでした。
<坂田さん>
「郷土史というものに惹かれるものがあって、調べる中で(浜松に)張り子の文化があったんだと」
気が付けば、仕事を辞めて地元に戻って来ていたといいます。
<坂田さん>
「郷土玩具はその土地の風土を生かして作ることが多い。(張り子は)乾かす工程が多く、日照時間や遠州の風の恩恵をすごく受けている。そこにロマンを感じて張り子にはまっているというか、(自分はこの)土地の人間だなと」
キャラクターを天狗にしたのも、地元にまつわる「天狗伝説」から。

「だいだらぼっち」に、

「三ヶ日の象泣き坂」、

「見返りの鹿」もみな、遠州地方に伝わる昔話がモチーフです。

<坂田さん>
「天狗は道開きの神でもあるので、自分が天狗の張り子をつくること、てんぐちゃんと活動することで、思いもよらぬ出会いや面白い人やことと出会うきっかけになっているので、作ったものにゆだねたい」
今風と古き良き伝統のハイブリッド玩具張り子の「てんぐちゃん」。
きょうも、ちょこんとたたずみ、心を癒してくれます。