<静岡県政担当 植田麻瑚記者>
2026年度から私立高校の授業料が実質無償化される予定で「公立離れ」の加速が懸念されています。私立との競争が激しくなる中、地域の伝統校が学び舎としての魅力を高め優秀な生徒を呼び込もうと、新たな取り組みを始めました。
静岡県立清水東高校サッカー部です。これまでに長谷川健太さんや内田篤人さんなど数々の日本代表選手を輩出してきました。全国制覇5度を誇る伝統校ですが、近年は私学勢に押され、1992年の夏を最後に全国への切符をつかめていません。
<県立清水東高校サッカー部 大川晃広総監督>
「そうそうそう、そうやってフラットに行けフラットに」
その背景の一つに「練習環境」が上がっているのです。
<大川総監督>
「どうしても使っているとどんどん凸凹してきますのでイレギュラーバウンドがあったりとか、周りを見る時間をボールを見る時間に取られてしまって、ボールから目が離せなくて、状況判断するための時間に使えないというのが大きなハンデになっています」
静岡県内の高校年代のリーグ戦に所属する強豪13校のうち、日常的に土のグラウンドで練習しているのは清水東を含め2校のみ。こうした状況を受け、OBと学校が連携し、グラウンドの人工芝化を目指すプロジェクトが始まりました。野球部の室内練習場も含め、2026年6月末までに1億5000万円の寄付を募る計画です。
<県立清水東高校サッカー部2年 MF 村松怜哉さん>
「清水東に入って、環境はすごく整っているんですけど、土というところだけ他の強豪校と違うところがあって、芝にすると聞いてこれでもっと強くなるなと思いました」
2026年度から私立高校の実質無償化が始まる予定で、公立離れが懸念される中、学校は人工芝化をイメージアップにつなげ、優秀な生徒を確保したい狙いもあります。
<県立清水東高校 井島秀樹校長>
「中学生の数がどんどん減っている現状がある中で、私学に授業料の面でアドバンテージ、県立高校が薄らいでいる状況の中で、いわゆる伝統校だから大丈夫というのではなくて、魅力化を図っていく必要が極めて大きいと思っています」
名門サッカー部の復活とともに、学び舎としての魅力づくりにも期待が高まっています。
<滝澤キャスター>
2025年4月から所得制限が撤廃され公立高校の実質無償化が始まりましたが、2026年から私立高校も無償化される予定なんですね。
<植田記者>
私立高校の年間支給額は最大で45万7000円に引き上げられる見通しです。これは全国平均額を基準に設定されているため、実質的に無償化となります。
大学への推薦制度や校舎内の施設が充実していることなどから、私立高校への進学者が増えると見込まれていて、公立高校ではさらに定員割れが進むのではと危機感を抱いています。
清水東高校の井島校長は「優秀な生徒に清水東を目指してもらえる環境をつくりたい。人工芝化が実現すれば、体育の授業でも使うことになるため在校生も含めてメリットが大きい」と話していました。
長年の伝統に甘んじることなく、公立高校にも魅力や特色を打ち出す努力が求められています。