アメリカで40万人以上が集まり愛と平和を訴えた、伝説の音楽の祭典「ウッドストック・フェスティバル」開催から2019年で50年。トランプ政権の移民政策などでアメリカ社会の分断が進む中、当時の参加者たちが「語り継ぎたいメッセージがある」と口を開きました。

ニューヨーク郊外にある一本道。ちょうど50年前、この道路は大渋滞を起こしていました。

人々が向かった先は伝説の音楽イベント「ウッドストック・フェスティバル」です。

川西全記者
「ちょうど50年前、ウッドストックのステージはあの石の積まれた辺りにありました。そして斜面全体を観客が覆いつくしていたということなんです」

ベトナム戦争の戦況悪化や人種差別問題などでアメリカ社会が大きく揺れる中、集まったのは
反戦を主張するヒッピーと呼ばれる人々や若者たち。

ウッドストックに来ていた女性
「あっちの方から入ってきて見えたのは大勢の人の波。人だらけでした」

最終的に観客の数は40万人以上に膨れあがりました。

観客はお互いに助け合い、大きな混乱も起きなかったことから、ウッドストックは「愛と平和と音楽の祭典」と呼ばれています。

ウッドストックに来ていた男性
「与えられた状況、たとえそれが食べ物や水がないひどい状況でもみんなで助け合えるんです」

ウッドストック50周年にあたる2019年、会場の跡地では記念コンサートが開かれました。

ステージに立った「サンタナ」は 日本でも数々のヒット曲で知られる大物アーティスト。ウッドストックで一躍有名になりました。

「サンタナ」のギタリスト、カルロス・サンタナさんはウッドストックがもたらしたのは「調和と団結」だったと語ります。

カルロス・サンタナさん
「私の心がパスポートであり、愛こそが通貨なんです。私はヒッピーだからそう信じています」

アメリカではトランプ大統領の登場で国の分断が深まっています。サンタナさん自身、もともとメキシコからの移民であり、トランプ氏の移民政策や排他的な言動には、強い危機感を抱いています。

カルロス・サンタナさん
「人々が恐怖とともに目を覚ます現状は問題です。たとえば、今この国ではびこっている白人至上主義などは調和と団結を難しくしています」

今年、ウッドストックに関する新たなドキュメンタリーを制作した映画監督のグッドマンさんは、今こそ、ウッドストックの「調和と団結」の精神から学ぶものがあると言います。

ウッドストックの新作ドキュメンタリーを制作した バラク・グッドマン監督
「愛とか平和とか叫ぶヒッピーを我々はバカにしがちです。しかし、彼らの世界観はどこか本当に美しかった」

カルロス・サンタナさん
「若者たちは今、当時のヒッピーと同様のことをしています。不満があれば抗議活動を行い、全米ライフル協会にはノーを突きつける。ウッドストックを今、すべての街で開催したいんです。それは恐怖を広めるのとは逆の行為ですから」