国による生活保護費の基準引き下げをめぐり富山市に住む受給者らが国と市に減額処分の取り消しなどを求めた裁判の控訴審で、名古屋高裁金沢支部は、減額処分の取り消しを命じた一審判決を支持。控訴棄却の判決を言い渡しました。

この裁判は、富山市の生活保護受給者5人が、2013年から段階的に生活保護費を引き下げられたことで、憲法が保証する「生存権」が侵害されたなどとして、減額処分の取り消しと国家賠償を求めていたものです。

去年1月、一審の富山地裁は、生活保護基準の引き下げは「違法」だとして、減額処分の取り消しを認めた一方、国への賠償請求は退けました。


この判決を不服として富山市と原告側の双方が控訴。同様の裁判は富山を含め全国で起こされていますが、最高裁はことし6月、「支給額の引き下げは違法」とする統一判断を初めて示し、引き下げの処分を取り消す判決を言い渡していました。

きょうの控訴審判決で名古屋高裁金沢支部の大野和明裁判長は、生活保護基準の引き下げの判断は「厚生労働大臣の裁量権の範囲に逸脱や汎用があった」として減額処分の取り消しを命じた一審判決を支持。

一方で、国への賠償請求は認めず、富山市と原告側双方の控訴を棄却しました。

提訴から10年。事実上の勝利判決を受け、亡くなった妻から原告を引き継いだ男性は。
原告団の男性「みんなが助け合えるような社会にするためには自分が原告として声をあげると。それが日本中の社会に広がっていけば。それが今からの戦いだと思います。広がっていけば日本が変わると。そのためには自分が変わらなきゃいけない。自分を変えてくれたのが生存権訴訟だと」

判決を受け富山市は「国が設置した専門委員会の議論を踏まえ対応を協議したい」としています。
