福島県で、酒気帯びの状態で車を運転し、受験生の女性をはね、死亡させた罪に問われていた男に、17日、福島地裁郡山支部は、懲役12年の実刑判決を言い渡しました。

危険運転致死傷と酒気帯び運転の罪で判決を受けたのは、郡山市の無職・池田怜平被告(35)です。判決によりますと、池田被告は、今年1月、酒気帯びの状態で車を運転し、JR郡山駅前で赤信号を無視し、時速70キロで交差点に進入、横断歩道を青信号で渡っていた大阪府の受験生の女性をはね、死亡させるなどしました。

事故現場で見分に立ち会った池田被告・今年2月

裁判は裁判員裁判で審理され、「赤信号を故意に無視したかどうか」が争点となっていました。裁判の中で、池田被告は事故前に4つの信号を無視したことが明らかになりましたが、被告人質問で池田被告は「事故直前、眠気があり、目をこする行為や、車のエアコンの操作をしていた」「赤信号を認識した記憶はない」と述べ、信号無視の“故意性”を否定しました。

一方、検察は「被告は事故直前、蛇行や車線の逸脱なく走行していて、信号に従うことができる状態だった」とし、「複数の赤信号の交差点を加速して通過し、従うつもりがなかった」と故意性を指摘しました。そして「犯行の経緯は、極めて悪質で結果が重大」として、懲役16年を求刑しました。

これに対し、弁護側は「車のエアコンのダイヤルを操作するために視線を下げたため、信号を見落としていた」と主張。「飲酒などの影響で極めて注意力が散漫だった」として危険運転致死傷罪は成立しないと訴えていました。

17日午後に開かれた判決公判で、下山洋司裁判長は「事故を起こすまでは周囲の状況を適切に把握して運転できており、酔いの程度がそこまで強いものだったとは考え難い」「赤信号をことさらに無視して交差点に進入したと認められる」として、危険運転致死傷罪の成立を認めました。そして「結果は極めて重大で、被告は反省の言葉を述べるものの、不合理な弁解に終始しており、真摯に本件事故に向き合っているとはいえない」などとして、池田被告に懲役12年の実刑判決を言い渡しました。

判決公判に出廷した池田被告

判決言い渡し後、池田被告の弁護人は「判決内容を精査し、被告と相談の上、控訴するか検討する」と話しました。

一方、亡くなった女性の母親は、判決について以下のようにコメントしています。

「裁判所が、危険運転致死傷罪の成立を認め、私達家族の悲しみや、被告人を許せない気持ちを十分酌んでくださったことは良かったですが、それにも関わらず懲役12年というのはあまりに刑が軽いと思います。
池田怜平被告は、飲酒をしてスピードを出したまま4カ所も信号無視をして娘の命を奪ったのにどうしてこんなに刑が軽いのでしょうか。
裁判でも池田被告は危険運転致死傷罪の成立を争い、言い訳ばかりを繰り返し反省の態度は一切見られず、その態度を見て私達は怒りと悲しみを深めるばかりでした。
他の同種事件と比較して出した判決なのかもしれませんが、私たち家族にとっては大切な娘の命が奪われたのですから到底納得できないものです。
今後、危険運転の罪については更なる厳罰化を強く望むとともに、これ以上私達のような悲しい思いをする家族が出ないことを切に願います。」