■地域に住む当事者だからこその気づき

6月24日、クマが目撃されたのは午後10時半ごろ。警察に通報があり、札幌市に情報が共有されました。

札幌市は公式LINEで日ごろクマの情報を発信していて、このときは午後11時57分に、登録している市民のもとに出没情報が届いています。近隣の小学校・中学校にも市から連絡されました。

円山西町の町内会長・有賀誠さんは、「4月の『らしき動物』の目撃情報を経験していたからこそ、深夜の段階ですぐに『クマ目撃』という情報になっていることに、確度が高いんだと理解できた。すぐに町内会の住民に知らせる必要があると考えた」と振り返ります。

勉強会で報告する有賀さん(7月・札幌市中央区円山西町)

そして町内会の執行部や児童会館、学校、まちづくりセンター、さらに「朝練をやるかもしれないから」と地域の少年野球チームにも連絡。

その結果、早朝のうちに学校からは保護者に一斉メールが出され、野球の朝練は中止の判断がされました。

さらに執行部のメンバーの気づきで、早朝に散歩をする人も多い地域のシニアクラブにも情報共有がされました。

地域の事情をよく知っている町内会だからこそ、市町村だけでは気づけないニーズまで気をまわして、早朝のうちに注意喚起をすることができました。

有賀さんの発表より。出没時には通学の見守り活動も行われた

さらに、町内会独自の「デジタル掲示板」も立ち上げていて、登録している約70人にも朝のうちに速報で伝えています。札幌市のLINEに加え、より自分の地域に特化した情報を得られる場所を、自分たちで作っているのです。

有賀さんは、「住民の間では、クマが出たときに『まさか』ではなく、『ついに出たね』という会話になった。それが今まで取り組んできたひとつの目標のようなもの。クマを身近に考えていると、冷静に対処できると思う」と話します。

円山西町の町内会長・有賀誠さん

実際に、この出没の調査結果に対して、有賀さんはとても冷静に分析をして住民に報告しました。