物理的証拠がない中、被告が一貫して無罪を主張している女性殺害事件の裁判員裁判で、長崎地裁は4日、無罪判決を言い渡しました。

判決を受けたのは、住所不定・無職の馬場恒典被告(75)です。

判決文などによりますと、馬場被告は2009年、当時住んでいた大村市の自宅で、内縁関係にあった女性を鈍器のようなもので複数回殴って殺害したとして殺人の罪に問われています。

これまでの公判で検察側は、被告の知人男性の証言など状況証拠を積み重ね、馬場被告による犯行が認められると主張。対する弁護側は一貫して無罪を主張してきました。

4日の判決公判で長崎地裁の太田寅彦裁判長は、「事件後、被告から知人男性に渡されたハンマーのようなものについて、検察側は殺害に使われた凶器と主張するものの、それが凶器と考えたのは知人男性個人の判断であり「客観的証拠」に欠ける」

「被告人が被害者殺害の実行犯であることを合理的な疑いを超える程度に証明できたとは言えない」などとして、馬場被告に無罪の判決を言い渡しました。

今回の判決は、状況証拠のみに基づく殺人事件の立証の困難さを示すケースとなりました。

判決を受け長崎地検は「判決内容を適切に精査して、控訴するかも含め適切に対応したい」とコメント。

また、被害者の遺族は「今は何も考えることはできません。被告が犯人でないのであれば誰が千賀子を殺したのでしょうか。検察官にはぜひ控訴して真実を明らかにしてもらいたいと思います。」とコメントしています。