総合体育館整備が構想されているドルフィンポート跡地では、鹿児島市もサッカースタジアム整備を検討しています。
この2つの構想を焦点にこれから本格化することになる本港区エリア全体の利活用を巡る議論。現状を取材しました。
(鹿児島市 下鶴市長)「スタジアム整備は『オール鹿児島』で取り組んでもらいたいと県にお願いしていて、そのことを確認できた」
(鹿児島県 塩田知事)「『オール鹿児島』というのは、知事就任前から、みなさんでそういう方向でやろうということだったから、その点は改めて確認した」
今週、開かれた県と鹿児島市の意見交換会でも取り上げられた本港区エリアの再開発。塩田知事は2020年に就任した後、新たな総合体育館の整備を検討する委員会を設置して議論を進めてきましたが、ことし3月、5つの候補地のうち県有地であるドルフィンポート跡地に整備する基本構想をとりまとめ、議会の了承を得ました。
この「構想」をより具体的な「計画」にして、2027年度から28年度の完成を目指して事業を進めていくはずでしたが、今月、新たな動きが。
鹿児島市はサッカースタジアム整備について、森前市長時代に候補地を3つにしぼり検討を続けていましたが、整備費や運営収支などからドルフィンポート跡地が「最も経済的」とする試算をまとめました。
県の構想では跡地に総合体育館と多目的広場を整備しますが、鹿児島市は県の構想にあったウォーターフロントパークをなくし、体育館の向きを変えてずらせば、スタジアムとの併設は可能としています。
県と鹿児島市が重複する形となったドルフィンポート跡地の活用。今後、調整を進めていくことになる知事と市長は21日の意見交換会では「オール鹿児島で取り組む」考えを示しましたが、十分に連携できているのか問われると。
(塩田知事)
「20、30点というと、また(低いと)言われるし、100点ということもないし」
(Q.100点という思いはないのか)
「目標はそうだが、いま100点かと言われると、100点と言ったのに、これはどうしたとまた言われるとつらい。70点ぐらいにしておいた方がいいかな」
そして、仮に2つの施設を併設した場合、港湾計画の見直しが必要となり、整備に遅れが出るとの見方を示しました。
(Q.仮に併設の方向で行くことになったときには、スケジュールにも遅れが出る?)
(塩田知事)「遅れる可能性はある」「スポーツ・コンベンションセンター(体育館)はできるだけ早く整備したいと考えている」
(総合体育館基本構想検討委員会・元委員 伊牟田均さん)「なぜ、1年前ぐらいから議論を進めなかったのか。進めるべきだった」
県の基本構想をまとめた検討委員の一人だった、伊牟田均さんです。今後の議論次第では施設整備に遅れが出かねないと懸念しています。
(伊牟田さん)
「今回まとまらないと、10年ぐらいかかってしまう。『鹿児島は何をしているのか』という感じになる」「見るスポーツを行うと、県外からもたくさんの人が来る。経済波及効果や回遊性も高まる」
一方、ドルフィンポート跡地での施設整備の必要性自体を問う声も。
(薩摩リーダーシップフォーラムSELF 坂口修一郎監事)「ここに体育館とスタジアムが並ぶと、ウォーターフロントパークも無くすことになる。なかなか難しい」
まちづくりに取り組むNPO法人「薩摩リーダーシップフォーラムSELF」の監事、坂口修一郎さんです。ドルフィンポート跡地を市民や観光客が集い安い場所にし、体育館やスタジアムは別の場所に整備すべきと訴えています。県の基本構想の見直しを求める署名をこれまでに1万1000人分以上集め、仲間と議論を重ねています。
(鹿児島市民)「子どもが芝生で走り回ったりとか、景色を楽しみながら家族で遊べる場所が魅力的」
(大学生)「ここから屋久島や種子島に観光で行く人が、体育館があっても利用できない」
議論は県や市の動きに対しても。
(SELFメンバー)「県と市の連携もあまり取れているように見えない。ビジョンもリーダーもないまま、50年、100年残るものを造っていいのかなと思う」
(鹿児島市民)「報道で『オール鹿児島』という文字が目に入った。みんなの意見を取り入れるということに実感が持てたらいいと思う」
坂口さんたちは25日も新聞に意見広告を掲載。多くの人にもっと議論してほしいと考えています。
(坂口監事)「海の玄関口はちゃんと外を向いて、すべての人を受け入れられる場所として開かれているべき。そこに特定の目的で内向きにというものを造るのは、ふさわしくない」「みんなが知ったうえで支持するかどうか考えたほうがいい」
鹿児島市出身で、横浜港などの景観プロデュースを手がけた国吉直行さんは、長期的な視野で議論を深めることが大切だと話します。
(横浜市立大学・鹿児島出身 国吉直行客員教授)「50年後の鹿児島の発展を考えた施設づくり。経済効果や観光客誘致も含めて、本当に意味があるのかという検証を。市民、県民のいろいろな意見が出されている中では、少し時間がかかっても活発に議論してほしい」
県は今後、鹿児島市も加えた検討委員会を立ち上げ、本港区の活用について議論することにしています。議論は来年度末までにとりまとめる方針ですが、その行方が注目されます。
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