「紘彬は死ぬっていうこと」

大上かおりさん
「私はどうしたかって言うと、紗彬ちゃんと、ともくんを助けることを選びました。ひろくんを諦めるってこと。紘彬は死ぬっていうこと」
「だから助けに、紗彬ちゃんと、ともくんを助けに行く前に『ひろー』ありたけの声でひろくんの名前を呼んで、それは私の中でひろくんごめんね。ひろくんごめんねって思いで『ひろー』って叫んで、紗彬ちゃんと、ともくんを助けることを選びました」
「私がともくんの、夫がもう沈んでもう溺れてたので、大きい方の体が大きいともくんの方抱っこして橋の柱のところ、橋脚っていうんだけど、橋脚まで、あそこまでなんとか行けば掴まれるんじゃないかと」
「ちょうどここからどこら辺かな?あの、バスケットゴールよりももしかしたら遠かったのかな?距離にして分からないんだけど、多分あれぐらい泳いだと思います」
「でもたったあそこぐらいまでの距離なのに、暗いし、洋服も着てるし、スムーズに泳ぐことはできなくて、ともくんはその柱の橋脚に着く途中に、私のこの肩に夕ご飯を吐きながら、私の胸の中で息を引き取りました」
「その後、救急車に運ばれたんだけど別々の救急車に乗って別々の病院に行ったんだけど、結局2人は助かりませんでした。絶望の中、亡くなったともくんとさあやちゃんと、もうその時はね、紗彬ちゃん硬くなってしまってたんですけど、お家に帰りました」
「もしかしたらもうひろくんは車から海の外にどこか飛び出してもう見つからないかもしれないな。でももしかしたら、もしかしたら飛び出したからこそ助かってるんじゃないかなとかも思いながら、もしかしてと思いながら家に帰りました」
「でも、真夜中にひろくんが車の中から見つかりましたっていう連絡がありました」