ターニャと語り合った夢・仕事・故郷
たまたま、自分は戦勝国側にいるが、場合によって立場は逆になり、自分が同じ境遇だったなら?自分は春男さんと同じようなことができたのか?その難しさを一番理解していたのかもしれない。
母親も好意を持ってもてなしてくれた。食事が済むと、2人は2階のターニャの部屋で会話を楽しんだ。それぞれの境遇、仕事、夢などを語り合った。
「ハルオ、あなたのふるさとはどんなところなの?」
彼女が尋ねると、春男さんは目を輝かせながら、四季の美しさに溢れているふるさとの自然を語った。

山形で3人兄弟の末っ子として生まれた。末っ子特有の甘えん坊というか、甘え上手な一面もあって、それが春男さんの人懐っこい性格を形成していた。ボイラーの免許を取得していた父は、鉄道の機関士を目指していたが、当時の山形には職はなく、新天地の名古屋に引っ越して職を求め工場勤務をしていた。
まだ幼さが残る小学6年生、12才の時だった。春男さんは山形出身だが、名古屋で少年時代を過ごし、満州へ出征、そこで終戦を迎えた。しかし、そこから数奇な運命に翻弄されることになった。